慢性の腰椎神経根症に対する仙骨部硬膜外ステロイドまたは生理食塩水注射は「推奨されない」と結論する多施設盲検無作為化試験の結果が報告された。ノルウェー・北ノルウェー大学病院リハビリテーション部門のTrond Iversen氏らによる。腰椎神経根症への硬膜外ステロイド注射は1953年来の治療法だが、長期有効性のエビデンスは乏しかった。それにもかかわらず、例えば米国では1994年から2001年に10万患者当たり553例から2,055例へと使用が増加、英国では2002~2003年の最も頻度の高い脊椎注射処置の1つとなっていた。本試験では、同注射の有効性について、短期(6週)、中期(12週)、長期(52週)の評価が行われた。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。
シャム群、生理食塩水注射群、ステロイド注射群に無作為化し短中長期に評価
試験は、ノルウェーの5つの病院付属外来クリニックにて被験者を募り行われた。
被験者は無作為に、0.9%生理食塩水2mLの皮下シャム注射群、0.9%生理食塩水30mLの仙骨部硬膜外注射群、0.9%生理食塩水29mL中にトリアムシノロンアセトニド(商品名:ケナコルト)40mgの仙骨部硬膜外注射群の3群に割り付けられ追跡評価された。
主要評価項目は、オスウェトリー障害指数スコア(oswestry disability index scores)とし、副次評価項目は、ヨーロッパQOL尺度、腰痛と下肢痛の視覚アナログスケールスコアとした。
2005年10月~2009年2月の間に461例の患者(>12週の腰椎神経根症を呈する)が登録されたが、328例は評価から除外された。馬尾症候群、重度の麻痺、痛みが激しい、脊髄注射または手術の既往、奇形、妊娠、母乳育児中、ワルファリン治療中、NSAID治療中、BMI>30、精神状態が不安定、重症の共存症といった理由からであった。
また、試験結果の適切な評価のためには、各群に41例の被験者を含む必要があったが、試験に適格であった133例のうち17例は、無作為化の前に症状改善が認められ割り付けができず解析は116例(皮下シャム注射群40例、生理食塩水注射群39例、ステロイド注射群37例)にて行われた。
3群ともに症状改善、統計的・臨床的な差は認められず
結果、介入後3群ともに症状の改善が認められ、統計的および臨床的格差は認められなかった。
シャム群のオスウェトリー障害指数は、基線補正後、6週時点で-4.7(95%信頼区間:-0.6~-8.8)、12週時点で-11.4(同:-6.3~-14.5)、52週時点で-14.3(同:-10.0~-18.7)とそれぞれ低下が推定された。
生理食塩水注射群の各時点の同指数は、シャム群と比較して6週時点は-0.5(同:-6.3~5.4)、12週時点は1.4(同:-4.5~7.2)、52週時点は-1.9(同:-8.0~4.3)だった。
ステロイド注射群は、それぞれ-2.9(同:-8.7~3.0)、4.0(同:-1.9~9.9)、1.9(同:-4.2~8.0)となっていた。
下肢痛、腰痛、または病気により休薬した期間で補正後も、この傾向は変わらなかった。