高齢者に対する頸動脈ステント留置術は、施術者の年間手術件数が少ないと、多い場合に比べ、30日死亡リスクが約2倍に増大することが明らかにされた。通算手術数が少ない施術者の同リスクは1.7倍であったという。米国・ミシガン大学ヘルスケアアウトカム・政策センターのBrahmajee K. Nallamothu氏らが、頸動脈ステント留置術を行った高齢者、約2万5,000人について行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。これまで、ステント術の有効性については臨床試験で検証がされているが、施術者の経験がアウトカムに及ぼす影響について臨床ベースで検討されていなかった。
施術者を年間手術件数と通算手術件数で分類、30日死亡率を比較
研究グループは、65歳以上のメディケア出来高払い制プラン加入者で、2005~2007年に頸動脈ステント留置術を行った人と施術者について調査を行った。頸動脈ステント留置術に対する、メディケアおよびメディケイド(Centers for Medicare & Medicaid Services:CMS)での支払いカバーは、2005年3月から導入されている。
調査は、施術者を年間の頸動脈ステント留置術実施件数によって、「6件未満」「6~11件」「12~23件」「24件以上」の4区分に分類して検討。また、CMSが導入後に初めて手術を行った施術者について、手術経験が「1~11件」までと浅かった場合と、「12件以上」の場合とを比較した。
主要アウトカムは、術後30日死亡率だった。
結果、調査対象期間中の頸動脈ステント留置術は2万4,701件、施術者数は2,339人だった。そのうち、CMSが導入後に初めて施術した医師は1,792人で、それらの実施件数は1万1,846件だった。
年間手術件数が少ないと死亡率は1.9倍に、経験が浅いと同1.7倍に
術後30日死亡率は、被験者全体では1.9%(461人)だった。塞栓防止用デバイスを用いての手術失敗率は4.8%(1,173人)だった。
メディケア加入者に対する年間施術数の中央値は、3.0(四分位範囲:1.4~6.5)だった。
調査期間中、年間12件以上施術をしていたのは、施術者の11.6%だった。
30日死亡率は、年間手術件数が少ないほど高く(p<0.001)、「6件未満」2.5%、「6~11件」1.9%、「12~23件」1.6%、「24件以上」1.4%だった。また、手術経験が11件以下の人の同率は2.3%で、12件以上の1.4%に比べ、有意に高率だった(p<0.001)。
多変量解析の結果、年間6件未満の施術者の、同24件以上施術者に対する30日死亡補正後オッズ比は、1.9(95%信頼区間:1.4~2.7、p<0.001)だった。
また、CMS導入後の施術者の経験別にみた、年間11件以下の施術者の、同12件以上施術者に対する30日死亡補正後オッズ比は、1.7(同:1.2~2.4、p=0.001)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)