米国高齢者の心不全による入院の割合は1998年からの10年間で、およそ3割低下したことが報告された。米国・エール大学医学部循環器内科部門のJersey Chen氏らが、米国とプエルトリコに住む約5,500万人超の高齢者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月19日号で発表した。米国では心不全の原因の一つである虚血性心疾患の罹患率が近年低下傾向にあり、また高血圧に対する降圧薬でのコントロールなども改善してきているが、一方でそれらと関連が深い心不全による入院や死亡が減少しているのかどうかについては検討されていなかった。
心不全入院率、1998~2008年で相対割合29.5%減少
研究グループは、メディケアの出来高払い制プランに加入し、1998~2008年の間に急性期病院からの退院の診療コードが心不全であった合計5,509万7,390人について、人口動態的変化や、共存症、心不全入院率、1年死亡率の変化を調査した。
結果、被験者の平均年齢は、1999~2000年の79.0歳から、2007~08年の79.9歳へと、上昇していた(p<0.001)。
心不全入院率は、年齢、性別、人種による補正後、1998年の10万人・年当たり2,845人から2008年の同2,007人へと、相対割合で29.5%減少していた(p<0.001)。年齢補正後の心不全入院率は、いずれの人種・性別においても、同期間において低下の傾向が認められた。
心不全入院後1年死亡率は、1999~2008年で相対割合6.6%減少にとどまる
心不全入院率の低下傾向には、州によって格差があることも認められた。リスク補正後の同率低下速度が全国平均より有意に速かったのは16州、遅かったのは3州(ワイオミング州、ロードアイランド州、コネチカット州)だった。
一方、リスク補正後の心不全入院後1年死亡率は、1999年の31.7%から2008年の29.6%へと、相対割合で6.6%の低下傾向にとどまった(p<0.001)。州別では、同期間に同1年死亡率が有意に低下したのは4州、有意に増加したのは5州だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)