1980~2010年の世界187ヵ国の乳がんおよび子宮頸がんの発症率や死亡率などの動向を調査した結果、開発途上国の若年層(15~49歳)の乳がん死亡および子宮頸がん死亡が顕著であることが明らかにされた。米国・ワシントン大学健康調査・評価研究所のMohammad H Forouzanfar氏らが、がん登録データ、人口動態調査、聞き取り調査のデータをシステマティックに集め解析した結果で、著者は「開発途上国での乳がん、子宮頸がんの対策強化が必要だ」と結論している。乳がん、子宮頸がんは15歳以上の女性の重大な死亡要因となっている。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月15日号)掲載報告より。
世界187ヵ国の乳がんと子宮頸がんの年齢特異的な年報データについて評価
Forouzanfar氏らは、世界187ヵ国の乳がんと子宮頸がんの年齢特異的な年報データについて評価した。
1980~2010年の、がん登録データ(発症率や死亡率)、人口動態調査、聞き取り調査(口頭剖検)データをシステマティックに集め、階層モデルを用いて死亡/発症(mortality-to-incidence:MI)比のモデル化を行った。
死亡率に関する総合的なデータベースを作成するため、MI比を乗算した発症率を人口動態調査、聞き取り調査に加味し、またガウス過程分析(Gaussian process regression)にて、年齢、性、国、年代といった変動要素を含む推定死亡率を算出した。最終モデル選定では、サンプル外分析にて妥当性を予測。推定不確定発症率についても死亡率、MI比とともに算出した。
世界の乳がん死亡の推定年間増大率は3.1%、子宮頸がんは0.6%
結果、世界の乳がん発症率は、1980年の64万1,000例(95%不確定区間:61万~75万)から、2010年には164万3,000例(同:142万1,000~178万2,000)に増大していた。推定年間増大率は3.1%だった。
子宮頸がんの発症率は、1980年は1年当たり37万8,000例(同:25万6,000~48万9,000)から、2010年は同45万4,000例(同:31万8,000~62万)へと増大していた。推定年間増大率は0.6%だった。
2010年の乳がんによる死亡は42万5,000例(同:35万9,000~45万3,000)で、そのうち開発途上国の15~49歳女性が6万8,000例(同:6万2,000~7万4,000)だった。
同じく子宮頸がんによる死亡は、2010年は1980年より死亡率は減少していたが、死亡は20万例(同:13万9,000~27万6,000)で、そのうち開発途上国の15~49歳の女性が4万6,000例(同:3万3,000~6万4,000)だった。
なお、著者は「乳がん死亡率は、地域や国によって顕著な変動が認められた」とも報告している。