自殺をした人の家族や友人、同僚に対する詳しい聞きとり調査により、自殺企図の兆候に気づいたり、その予防策を行うにあたっての困難な点が明らかにされた。英国・Devon Partnership NHS TrustのChristabel Owens氏らが、自殺既遂者14人の家族や友人など合わせて31人に対し聞き取り調査をして明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表した。自殺を予防するための近親者の役割や、予防の障害などについての研究は、これまでほとんど行われていないという。一方で、WHOの予測によれば、世界中で自殺による死亡は年間約100万人に上ると報告されている。
自殺企図者の悩みや苦痛、そのコミュニケーションが困難
Owens氏らは、18~34歳の自殺既遂者で、自殺した年に精神的ケアサービスを受けていなかった14人について、その両親やパートナー、きょうだい、友人、同僚の合わせて31人への詳しい聞き取り調査を行った。自殺者のうち男性は12人だった。
その結果、自殺者は自分の悩みや苦痛について、他者とコミュニケーションすることが難しかったことが明らかになった。また、苦痛の兆候は間接的で、家族などがそれを解読したり、気づくことが難しく、さらに自殺者が、近親者による介入を避けるために、わざと平静を装うこともあった。
自殺企図者のプライバシーや自主性尊重で、介入できず
さらに、自殺者した人について、家族や友人などが、何か重大な問題があると気づいても、すぐに介入することは難しく、「しばらく様子をみる」という結果になる場合が多かった。家族や友人の中には、自殺者のプライバシーや自主性を尊重し、何も介入できなかったとした人もいた。
家族などが、社会的ネットワークに相談するということについても、いつ、どこへ、どのように助けを求めるべきなのかがわからないとする声が多かった。また、相談しても事態を深刻に理解してくれないのではないか、とする懸念もあったという。
研究グループは、自殺企図者の近親者の持つ、こうした困難な点を理解した上で、近親者による自殺予防に注力することが急務であるとまとめ、近親者に対して、自殺の兆候はあいまいであること、また介入への恐れを克服することが重要であることを強調すべきと結論している。
(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)