急性高山病は気圧の低い高地を旅行した際、順応性が弱い一部の人に出現する。この「気圧の低い高地」の条件は飛行中の旅客機でも生じるが、乗客に高山病が出現するかどうかは明らかではない。
ボーイング・メディカル社のJ. Michael Muhm氏らは、飛行中の旅客機と同様の環境を用意し、不快感がどのようなメカニズムで、どの程度の頻度で現れるのかを調査した。NEJM誌7月5日号掲載の報告から。
飛行機の気圧低下が急性高山病に及ぼす影響を判定する模擬飛行試験
Muhm氏らは、海抜650、4,000、6,000、7,000、8,000フィート(各198、1,219、1,829、2,134、2,438m)相当における飛行中の旅客機と同様の気圧低下が動脈血酸素飽和度、急性高山病、不快の発生に及ぼす影響を判定するため、成人ボランティアを対象に、20時間の模擬飛行試験を実施した。測定には自覚症状質問表(Environmental Symptoms Questionnaire IV)への回答が用いられ、前向き単盲検対照低圧室研究として実施された。
飛行機の気圧低下で急性高山病は全体で7.4%出現
飛行中の旅客機と同様の気圧低下が急性高山病の出現に及ぼす影響を調べた試験で、参加者502人の平均酸素飽和度が8,000フィートの最高高度で最大4.4パーセンテージ・ポイント(95%信頼区間:3.9~4.9)が低下した。
急性高山病は全体で7.4%出現したが、今回研究対象となった高度間での頻度に有意差は見られなかったという。
不快の訴えは、高度が増し酸素飽和度が低下するとともに増加し、7,000~8,000フィートの場合で一番多く、その差異は3~9時間の曝露後に明らかになった。年齢的には若い人よりも60歳以上の人が、また女性よりも男性のほうが、不快を訴えるケースが少なかった。
重篤な有害事象は4例で、その1つは今回の研究での曝露との関連の可能性が指摘された。それ以外の15例のうち9例は今回の研究での曝露との関連が認められた。
以上から、地上7,000~8,000フィートという環境への飛行機の上昇は、酸素飽和度を約4パーセンテージ・ポイント低下させること、この高度では低酸素血症による急性高山病とまではならないものの、順応性が弱い人では3~9時間後に不快を訴える頻度が増すことが明らかになったと報告している。
(朝田哲明:医療ライター)