胸部X線による年1回の肺がん検診は、肺がん死亡率を低下しないと結論する報告が発表された。米国・ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが、15万人超を対象に行われた、がんスクリーニング無作為化比較試験「PLCO」から肺がんスクリーニング4年間の追跡結果を解析した結果で、JAMA誌2011年11月2日号(オンライン版2011年10月26日号)で発表した。胸部X線による肺がん検診の死亡率に対する有効性は、これまで明らかにされていなかった。
追跡期間13年間で、肺がん死亡率、肺がん罹患率などを分析
PLCOは前立腺、肺、大腸、卵巣の4つのがんスクリーニングを対象とする試験。被験者は毎年スクリーニングを受ける群と、通常の医療ケアを受ける群に割り付けられフォローアップが行われた。
研究グループは、それら被験者の胸部X線による肺がんスクリーニングの死亡率の影響を調べた。1993~2001年にかけて、55~74歳の15万4,901人が無作為に割り付けられ、一方の群(7万7,445人)には年1回の胸部X線正面像撮影による肺がんスクリーニング検査が4年間にわたり行われた。もう一方の群(7万7,456人)には通常の医療ケアが行われた。
スクリーニング検査の陽性結果に対するフォローアップについては、被験者とその医師らによって決定した。
主要アウトカムは肺がん死亡率、副次アウトカムは肺がん罹患率と診断目的の処置による合併症、総死亡率とされた。
追跡期間は13年、または2009年末時点までのいずれかで、先に到達した時点までで調査が行われた。
累積肺がん罹患率、肺がん死亡率ともに両群で有意差なし
検診群における肺がん検診実施率は、初回が86.6%、1~3年後は79~84%だった。対照群における検診実施率は、11%だった。
追跡期間中の累積肺がん罹患率は、1万人・年当たり、検診群20.1、対照群19.2と、両群で有意差はなかった(累積肺がん罹患率比:1.05、95%信頼区間:0.98~1.12)。
同期間中の肺がん死亡数も、検診群1,213人、対照群1,230人と、両群で同等だった(肺がん死亡率比:0.99、同:0.87~1.22)。肺がんの組織学的状態や病期についても、両群で有意差は認められなかった。
また、大量喫煙者3万人超について6年間追跡して行ったサブグループ分析でも、検診群と対照群で、肺がん死亡率に有意差はなかった(肺がん死亡率比:0.94、同:0.81~1.10)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)