注意欠陥・多動性障害(ADHD)薬について、北米で持ち上がっている、重篤な心血管イベントリスクを増大するのではないかとの懸念に対し、米国・ヴァンダービルト大学小児科部門のWilliam O. Cooper氏らは、2~24歳約120万人を対象とする大規模な後ろ向きコホート試験を行った。結果、両者の因果関係は認められなかったことを報告した。95%信頼区間の上限値がリスク倍増の可能性を無視できない値ではあったが、「しかしながら、リスク増大の絶対値は低い」と結論している。NEJM誌2011年11月17日号(オンライン版2011年11月1日号)掲載報告より。
2~24歳の、ADHD薬服用中の37万3,667人・年を含む257万9,104人・年について検討
Cooper氏らは、ADHD服用と重篤な心血管イベントとの関連を調べるため、4つの健康保険組織(テネシーメディケイド、ワシントン州メディケイド、カイザーパーマネント・カリフォルニア、オプタムインサイト・エピデミオロジー)から自動抽出したデータを用いて後ろ向きコホート研究を行った。
対象は、2~24歳120万438例で、ADHD薬を服用中の37万3,667人・年を含む257万9,104人・年について検討した。
健康保険データと人口動態データから重篤な心血管イベント例(突然死、急性心筋梗塞、脳卒中)を同定し、診療録と突き合わせエンドポイントを同定。ADHD薬現在服用者と非服用者とのエンドポイント発生の推定相対リスクをCox回帰モデルによるハザード比で比較した。
ADHD薬現在服用者にリスク増大は認められず
コホートにおける重篤な心血管イベント例は81件であった(3.1件/10万人・年)。
ADHD薬現在服用者の重篤な心血管イベントのリスクは増大していなかった(補正後ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.31~1.85)。リスク増大は、個別エンドポイントすべてで認められなかった。また以前の服用者と現在服用者との比較でも認められなかった(同:0.70、0.29~1.72)。
その他いくつかの試験推測について言及した解析の結果も、ADHD薬服用と試験のエンドポイントのリスクとの関連は有意ではなかった。
(武藤まき:医療ライター)