液状化細胞診(liquid based cytology:LBC)は子宮頸癌のスクリーニング法として広く用いられている。しかし、その診断の正確度(accuracy)を検証した研究のほとんどが非無作為化試験あるいは1人の女性に2つの検査を実施して比較するものであり、無作為化試験は小規模な研究が1つあるのみだという。
イタリア・トリノ市の癌予防センター腫瘍疫学のGuglielmo Ronco氏らは、子宮頸癌のスクリーニングにおける従来法とLBCの正確度を比較する大規模な無作為化試験を実施した。BMJ誌5月21日付オンライン版、7月7日付本誌に掲載された報告。
25~60歳の約45,000名の女性を対象とした無作為化試験
対象は、2002~2003年にイタリアの9つのスクリーニングセンターに登録された25~60歳の女性。22,466名がスメアによる従来法に、22,708名がLBCおよびヒトパピローマウイルス(HPV)検査を実施する群に無作為に割り付けられた。
LBCで異型細胞が見つかった場合はコルポスコピーを施行した。LBCが正常でHPV陽性のうち35~60歳の女性はコルポスコピーを、25~34歳の女性は1年後に再検査を行ったが、これらの結果は今回の解析には含めなかった。従来法群は、軽度以上の扁平上皮内病変を有する場合にコルポスコピーを施行。細胞診とHPV検査の結果を評価して病変が疑われる場合は生検を実施し、組織学的に子宮頸部上皮内腫瘍が確認された場合には盲検下に細胞診の結果の評価を行った。
LBCの検出感度は従来法と同等、不適正スライドの頻度は有意に低下
LBC群のgrade 2以上の子宮頸部上皮内腫瘍の検出感度(sensitibity)は従来法群と有意な差はなかったが、陽性予測値は有意に低下していた。LBC群ではgrade 1以上の病変が有意に多く検出され、特に25~34歳の女性における検出率が高かったが、grade 3以上の病変の検出率には有意差は見られなかった。不適正なスライドが少なくとも1つ以上作製された女性の頻度はLBC群で有意に少なかった。
Ronco氏は、「LBCの主な利点は不適正スライドが少ないことである。さらに、LBCでは診断に要する時間が短縮され、1つの試料でHPVだけでなく他の分子の検索も可能である」としている。
(菅野 守:医学ライター)