冠動脈疾患診断の新しい非侵襲的診断検査法である冠動脈CT血管造影法(CCTA)について、米国メディケア受給者を対象に、ストレステストとの利用状況の比較および検査後の医療費支払いについての比較が行われた。結果、CCTAを受けた人のほうが、その後に侵襲的な手技を受けている割合が高く、冠動脈疾患関連の医療費支払いが高い傾向にあることが報告された。米国・スタンフォード大学のJacqueline Baras Shreibati氏らが2005~2008年の66歳以上メディケア受給者28万人超のデータを解析した結果、報告した。JAMA誌2011年11月16日号掲載報告より。
CCTAを受けた人とストレステストを受けた人を比較
Shreibati氏らは、メディケア受給者を対象に、非侵襲的心臓検査を機能的検査(ストレステスト:心筋血流シンチグラフィー、負荷心エコー、運動負荷心電図)で受けた人と解剖学的検査(CCTA)で受けた人との利用状況およびその後の医療費支払いについて比較する後ろ向き観察コホート研究を行った。
対象は、66歳以上の2005~2008年のメディケア診療報酬支払受給者で、請求データから20%無作為抽出で選出された、非緊急かつ非侵襲の冠動脈疾患診断を受けた年の前年には冠動脈疾患に関する支払いがなかった28万2,830例だった。
主要評価項目は、診断を受けてから180日間の、心臓カテーテル治療(心カテ)、冠動脈血行再建の施行率、急性心筋梗塞の発生率、全死因死亡率、メディケア支払いの総額およびCAD関連の支払額についてだった。
CCTA群で総医療費支払いが有意に高かった
結果、心筋血流シンチグラフィー(MPS)を受けた人(参照群)と比べてCCTAを受けた人は、その後に侵襲的手技を受けている割合が増大する可能性が示された。心カテを受けていたのは、CCTA群22.9%に対しMPS群12.1%(補正後オッズ比:2.19、95%信頼区間:2.08~2.32、P<0.001)、経皮的冠動脈介入(PCI)は同7.8%対3.4%(同:2.49、2.28~2.72、P<0.001)、冠動脈バイパス移植(CABG)は同3.7%対1.3%(同:3.00、2.63~3.41、P<0.001)で、それぞれCCTA群の有意な増大が認められた。
またCCTA群のほうが、総医療費支払いが有意に高かった[MPS群より4,200ドル増(95%信頼区間:3,193~5,267)、P<0.001]。その要因のほとんどは、冠動脈疾患関連の支払いが多かったこと[MPS群より4,007ドル増(同:3,256~4,835)、P<0.001]によるものだった。一方で、負荷心エコー群や運動負荷心電図群の総医療費支払いは、MPS群より少なかった。負荷心エコー群はMPS群より-4,981ドル(同:-4,991~-4,969、P<0.001)、運動負荷心電図群は同-7,449ドル(同:-7,452~-7,444、P<0.001)だった。
しかし180日時点の全死因死亡率、急性心筋梗塞による入院率は、CCTA群で減少する可能性はわずかだった。全死因死亡率はCCTA群1.05%に対しMPS群1.28%(補正後オッズ比:1.11、95%信頼区間:0.88~1.38、P=0.32)、急性心筋梗塞による入院率は同0.19%対0.43%(同:0.60、0.37~0.98、P=0.04)だった。
著者は、「現状ではCCTAの利用は3%だが、今後10年で相当な増加が予想される。しかし、本結果が示すようにCCTAはその後の侵襲的手技を増やし、医療費コストを増大する。臨床家と政策担当者は、その後のアウトカムの試験結果に基づき、臨床でのCCTA利用を批判的に評価すべきであろう」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)