冠動脈疾患患者に対しアトルバスタチン(商品名:リピトールなど)80mg/日、またはロスバスタチン(同:クレストール)40mg/日を104週間投与する強化スタチン療法は、いずれも病変部の冠動脈硬化を有意に退縮することが示された。アテローム容積率(PAV)の減少幅が両群で同等だった。米国・クリーブランドクリニックのStephen J. Nicholls氏らが、1,000人超について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2011年12月1月号(オンライン版2011年11月15日)で発表した。スタチン治療の低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させる能力に比例して、有害な心血管転帰が減少し冠動脈硬化の進展が抑制されることは知られている。しかしこれまで、強化スタチン療法による病変の退縮効果を検討した試験や、最大投与量同士を直接比較する試験は、ほとんど行われていなかった。
アテローム容積率、両群ともに1~1.2%減少
研究グループは、冠動脈疾患患者1,039人を対象に、アトルバスタチン80mg/日、またはロスバスタチン40mg/日を104週間投与し、治療前後に血管内超音波検査を行い、冠動脈アテローム性硬化症の進行について比較した。
結果、アトルバスタチン群のLDLコレステロール値は70.2mg/dLだったのに対し、ロスバスタチン群では62.6mg/dLと、有意に低かった(p<0.001)。HDLコレステロール値も、アトルバスタチン群の48.6mg/dLに対しロスバスタチン群では50.4mg/dLと、有意に高かった(p=0.01)。
104週間後の主要有効性エンドポイントのアテローム体積率(PAV)の変化の中央値は、アトルバスタチン群で-0.99%(95%信頼区間:-1.19~-0.63)、ロスバスタチン群で-1.22%(同:-1.52~-0.90)で、両群で有意差はなかった(p=0.17)。
副次有効性エンドポイントの標準化総アテローム容積率(TAV)の変化の中央値については、ロスバスタチン群で-6.39mm3(同:-7.52~-5.12)と、アトルバスタチン群の-4.42 mm3(同:-5.98~-3.26)に比べ、有意に減少幅が大きかった(p=0.01)。
両群の6~7割で冠動脈硬化の退縮
また両群ともに、多くの患者で冠動脈アテローム性硬化症の退縮が認められ、PAVが減少した人の割合はアトルバスタチン群で63.2%、ロスバスタチン群で68.5%だった(p=0.07)。TAVが減少した人の割合はロスバスタチン群のほうが多く、それぞれ64.7%と71.3%だった(p=0.02)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)