スタチンは治療終了後も長期に効果が持続:HPSの長期追跡結果

提供元:ケアネット

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公開日:2011/12/22

 



長期(5年)のシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療によるLDLコレステロール低下療法は、血管イベントの絶対低下率を改善し、そのベネフィットは治療終了後も少なくとも5年間は新たなリスクをもたらすことなく持続することが、イギリスで実施されたHeart Protection Study(HPS)の長期追跡の結果から明らかとなった。HPSや他の大規模臨床試験の結果により、スタチンは5年間の治療でLDLコレステロールを1mmol/L低下させ、高齢患者や低脂質値患者を含む広範な集団の血管死、血管疾患を約25%低減することが示されている。一方、疫学試験の長期的観察では特定のがんや非血管死、非血管疾患の罹患率が上昇することが指摘され、5年以上のスタチン治療により発がんや他の有害事象が増加する可能性が示唆されている。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月23日号)掲載の報告。

追跡期間を延長してスタチン治療終了後の長期的効果を評価




HPSは、スタチンによるLDLコレステロール低下療法の長期的な有効性と安全性の評価を目的に追跡期間が延長されており、今回、研究グループは試験中および治療終了後の原因別の死亡と主要な疾患の罹患状況について報告した。

血管および非血管アウトカムが高リスクの2万536例が、シンバスタチン40mg/日(1万269例)あるいはプラセボ(1万267例)を5年間投与する群に無作為に割り付けられた。試験中の平均追跡期間は5.3年(SD 1.2)、治療終了後生存例の試験開始からの平均追跡期間は11年(SD 0.6)であった。主要評価項目は、無作為割り付け後の初回大血管イベントとした。

ベネフィットは治療終了後も長期に継続、発がんリスクに差はない




試験開始時に登録された2万536例のうち、治療終了後の延長追跡の開始時点で1万7,519例(シンバスタチン群:8,863例、プラセボ群:8,656例)が生存していた。

ベースラインのLDLコレステロールは両群とも3.4mmol/Lで、試験中にシンバスタチン群は2.3mmol/Lまで低下し、プラセボ群は3.3mmol/Lであった。試験中の初回大血管イベントの発生率はシンバスタチン群が21.0%と、プラセボ群の26.4%に比べ有意に23%低下した(95%信頼区間:19~28、p<0.0001)。1年目こそ有意差を認めなかったが、2年目以降は毎年、有意な差がみられた。

治療終了以降の延長追跡期間中(スタチンの使用状況と脂質値は両群で同等)は、血管イベント(リスク比:0.95、95%信頼区間:0.89~1.02)および血管死(同:0.98、0.90~1.07)の低下率には両群間でそれ以上の差は認めなかった。

試験中と治療終了後の追跡期間を合わせると、すべてのがんの発生(リスク比:0.98、95%信頼区間:0.92~1.05)、特定の部位のがんの発生、がんによる死亡(同:1.01、0.92~1.11)、非血管疾患が原因の死亡(同:0.96、0.89~1.03)に有意な差はなかった。

著者は、「長期のスタチン治療によるLDLコレステロール低下療法は、血管イベントの絶対低下率をさらに改善し、そのベネフィットは治療終了後も、少なくとも5年間は新たなリスクをもたらすことなく持続した」と結論し、「これらの知見は、スタチン治療の迅速な開始と長期的な継続について、いっそうの支持を与えるものだ」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)