進行結腸・直腸癌に対する化学療法の至適レジメンについては、first-line治療のみならずsecond-line、third-line治療をも視野に入れ、最も有効な薬剤の組み合わせとその効果的な投与法の探索が進められている。進行結腸・直腸癌に対する標準的治療薬であるフルオロウラシル(5-FU)に、塩酸イリノテカン(CPT-11)およびオキサリプラチン(L-OHP)を併用するアプローチは生存期間の延長など臨床的ベネフィットをもたらすことが示されている。
オランダ・ラドボウド大学ナイメーヘン医療センターのMiriam Koopman氏らは、5-FUの代わりに経口フッ化ピリミジン薬であるカペシタビン(CAP)を用い、CPT-11、L-OHPの3剤の組み合わせ(CAIRO)に関する2つの投与法の有用性を評価する無作為化第III相試験を実施した。7月14日付Lancet誌に掲載された報告から。
CAP→CPT-11→CAP+L-OHP vs. CAP+CPT-11→CAP+L-OHP
2003年1月~2004年12月の間に、オランダの74施設から進行結腸・直腸癌820例が登録され、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。(1)first-line:CAP、second-line:CPT-11、third-line:CAP+L-OHP(逐次投与群、410例)、(2)first-line:CAP+CPT-11、second-line:CAP+L-OHP(同時投与群、410例)。主要評価項目は全生存率とした。
生存期間中央値は、逐次投与群が16.3ヵ月、同時投与群が17.4ヵ月であり、有意な差は認められなかった(p=0.3281)。逐次投与群に対する同時投与群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.79-1.08、p=0.3281)と有意差は認めなかった。また、1年生存率も、それぞれ64%、67%と同等であった(p=0.38)。
first-line治療においては、同時投与群で無増悪生存期間(5.8 vs. 7.8ヵ月、p=0.0002)、全体の奏効率(CR+PR)(20 vs. 41%、p<0.0001)、腫瘍増殖抑制率(CR+PR+SD)(74 vs. 87%、p<0.0001)が有意に優れていた。
CAIROの逐次投与法は確立された治療法
全体のgrade 3~4の有害事象は、grade 3の手足症候群の頻度が逐次投与群で有意に多く見られたが(13 vs. 7%、p=0.004)、それ以外については両群間に差は認めなかった。first-line治療に限ると、重篤な有害事象の頻度は逐次投与群のほうが少なかった。
これらの結果から、Koopman氏は「CAIROの同時投与法の全生存率が逐次投与法を凌駕することはなかった。逐次投与法は結腸・直腸癌に対する確立された治療法であることが改めて確認された」と結論している。また、同氏は「分子標的治療薬の導入によって進行結腸・直腸癌の治療選択肢や転帰は大きく変化しているが、全身療法の根幹が抗癌剤であることに変わりはない」と考察している。
(菅野 守:医学ライター)