入院3時間までのトロポニンI検査の実施、急性心筋梗塞の早期診断に貢献の可能性

急性冠症候群(ACS)の疑いのある人に対し、高感度トロポニンI検査や従来型トロポニンI検査は入院後3時間までに行うことが、急性心筋梗塞の早期のルールアウトを容易なものとする可能性があることが報告された。また、入院時と3時間後までの測定値の変化を見ることで急性心筋梗塞の陽性的中率はいずれの方法でも約96%まで上がり、早期診断が可能となることも報告された。ドイツ・ハンブルグ大学心臓病センターのTill Keller氏らが、1,800人超のACSの疑いのある人について行った前向き試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月28日号で発表した。
トロポニンI試験を、入院時、3、6時間後に実施
研究グループは2007~2008年にかけて、ドイツの3ヵ所の医療機関を通じて、急性冠症候群の疑いで受診した患者1,818人について試験を行った。
被験者は、年齢18~85歳(平均61.4歳)で、追跡期間は30日だった。被験者に対し高感度トロポニンI(hsTnI)検査と、従来型のトロポニンI(cTnI)検査を、入院時、3、6時間後に行い、その診断能力を12のバイオマーカーで比較した。
その結果、被験者の22.7%にあたる413人が、急性心筋梗塞の診断を受けた。急性心筋梗塞の診断に関する入院時hsTnI検査の受診者動作特性(ROC)曲線下面積は0.96(95%信頼区間:0.95~0.97)、入院時cTnI検査の同面積は0.92(同:0.90~0.94)だった。
入院時カットオフ値と3時間の変化値を併せることで陽性適中率は約96%に
入院時hsTnI検査の感受性は82.3%、陰性適中率(AMIのルールアウトのための)は94.7%だった。入院時cTnI試験では、それぞれ79.4%、94.0%だった。
入院後3時間後の実施では、hsTnI試験、cTnI試験ともに、感受性は98.2%、陰性適中率は99.4%だった。
入院時の99パーセンタイル・カットオフ値と、トロポニン値の入院3時間以内の連続的変化を併せることで、陽性適中率は、hsTnI検査では入院時75.1%から3時間後95.8%へ、cTnI検査では入院時80.9%から3時間後96.1%へと、いずれも向上した。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
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