治験報告の質について、文書タイプ[治験レジストリ報告書(registry report)、治験総括報告書(clinical study report)、学術誌投稿論文]の違いを比較した結果、治験総括報告書が最も質が高いことが明らかにされた。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所のBeate Wieseler氏らが後ろ向き解析の結果、報告した。レジストリ報告書と投稿論文については相互に弱い部分が異なり、レジストリ報告書は、アウトカムは十分報告されていたが方法論の報告は乏しく、学術誌はその反対であったという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載報告より。
治験報告内容の質を文書タイプの違いで比較
Wieseler氏らは、治験報告の質について、実施された治験を評価するのに十分な情報が報告されているかを、文書タイプの違いで比較する検討を行った。
ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所が行っている16の創薬医療技術評価から、2006年~2011年2月の間の主要研究と、関連している文書を収集した。
それら各文書の研究報告と有効性報告の質について、方法論に関して6項目、アウトカムに関して6項目で評価を行い、「報告が完全である」と「報告が不十分」の2つに分けた。
文書タイプごとに、方法論とアウトカムの報告が完全であった文書の割合を、項目ごとでおよび全体的に算出して、見いだされた所見を比較した。
レジストリ報告書と投稿論文は、質の優劣項目が相互に逆転
268の研究が検索され、解析に有効であったのは、投稿論文192(72%)、治験総括報告書101(38%)、レジストリ報告書78(29%)だった。
結果、質が最も高かったのは治験総括報告書で、方法論およびアウトカムの全項目の約90%(1,086/1,212)について「情報が完全である」と評価された。
レジストリ報告書は、アウトカム項目[全体の330/468(71%)]のほうが方法論項目[同147/468(31%)]より「情報が完全である」と評価された割合が高かった。投稿論文でも同様の傾向が認められた[594/1,152(52%)vs. 458/1,152(40%)]。
マッチドペア分析の結果では、レジストリ報告書の質は、方法論およびアウトカムの項目全体で、治験総括報告書よりも劣っていた(各症例P<0.001)。
一方でレジストリ報告書は、投稿論文と比べて、方法論項目全体では劣っていたが(P<0.001)、アウトカム項目全体では優れていた(P=0.005)。
これら所見を踏まえてWieseler氏は最後に、「報告書を改善するには、結果登録の基準順守を世界的に義務化させる必要がある」とまとめている。