遺伝性前立腺がんリスクの有意な上昇と関連する、新たな遺伝子変異の存在が明らかになった。前立腺がんにとって家族歴は有意なリスク因子だが、これまで、その決定要因として関連深い遺伝子基盤の解明は十分にはなされていなかった。この知見は、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のCharles M. Ewing氏らが報告したもので、「見つかった変異体は、すべての前立腺がん発症からみればごくわずかを占めるに過ぎないが、家族歴の評価など現行の前立腺がんのリスク評価に影響を及ぼすもので、頻度の高い前立腺がんという疾病メカニズムに対して新たな洞察をもたらす可能性がある」と結論している。NEJM誌2012年1月12日号掲載報告より。
前立腺の発生に関わる遺伝子HOXB13中に再発性の変異(G84E)がまれに含まれる
これまでの連鎖解析研究で、前立腺がんの感受性遺伝子座として染色体17q21-22が示唆されている。研究グループは、試験のために選択した家族から、血縁関係のない前立腺がん患者94例の、17q21-22領域の200以上の遺伝子をスクリーニングし、候補領域の連鎖について調べた。そして発生が認められた突然変異について、その頻度の特徴を明らかにするため、家族構成、新たな症例被験者の存在、対照例について調べた。
その結果、4家族の発端者に、前立腺の発生と深く関わるホメオボックス転写因子遺伝子HOXB13(rs138213197)中に再発性の変異(G84E)が、まれではあるが含まれることが明らかになった。
G84Eは早期発症の家族性前立腺がん患者で高頻度
それら4家族で、18例の前立腺がん患者と全員に変異DNAの存在が認められることも明らかになった。
また、G84E変異は、前立腺がんのあった非血縁ヨーロッパ人5,083例中、対照例では1,401例中1(0.1%)で認められた一方、被験者群では72例(1.4%)に認められ約20倍高かった[P=8.5×10(-7)]。
変異の発現は、早期発症の家族性前立腺がん患者(3.1%)が、晩期発症の非家族性前立腺がん患者(0.6%)と比べて、有意に頻度が高かった[P=2.0×10(-6)]。
(朝田哲明:医療ライター)