従来の剖検との比較では、死後画像検査としてのCTはMRIよりも死因の同定の正確度(accuracy)が優れることが、英国・オックスフォード大学付属John Radcliffe病院のIan S D Roberts氏らの検討で示された。剖検に反対する世論の高まりにより、侵襲性が最小限の死因判定法の確立を目指し検討が進められている。画像検査による判定法が有望視されているが、その正確度は明らかでないという。Lancet誌2012年1月14日号(オンライン版2011年11月22日号)掲載の報告。
CT、MRIによる死後画像検査と完全剖検所見を比較
研究グループは、成人死亡例を対象に、死後画像検査としてのCTおよびMRIの正確度を、完全剖検所見との比較において評価する検証試験を行った。
試験は、2006年4月~2008年11月に、マンチェスターとオックスフォードの2施設が参加して行われた。成人の死亡例に対し全身CTおよびMRIを行った後、完全剖検を実施した。
CTとMRIの結果は、剖検所見をマスクされた2名の放射線科医が別個に報告した。その後、4名の放射線科医が協議を行って死因の信頼性を検討し、剖検の必要性を評価した。
剖検との死因不一致率はCTがMRIよりも10%低い
任意に抽出された182人の成人死亡例が対象となった。剖検の判定との死因の不一致率は、CTが32%、MRIは43%で、CTが10%低かった。
182人中、CTでは62人(34%)が、MRIでは76人(42%)が、両画像検査の合意報告では88人(48%)が剖検不要と判定された。剖検不要と判定された死亡例のうち、剖検との死因不一致率はCTが16%、MRIが21%、合意報告は16%であり、死因不明例に比べ有意に低かった(p<0.0001)。
画像検査による死因の誤判定で最も頻度が高かったのは、虚血性心疾患が27人、肺塞栓症が11人、肺炎が13人、腹腔内病変が16人であった。
著者は、「従来の剖検との比較では、CTはMRIよりも死因の同定の正確度が優れていた。誤判定率は臨床的な死亡証明書と同等であり、法医学的な目的では許容範囲内であった」と結論し、「CTとMRIはいずれも突然死の原因を誤判定する頻度が高く、これらの弱点に取り組まないうちは、従来の剖検に代えて死後画像検査を導入しても、死亡統計に系統的誤差が生じると考えられる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)