マンモグラフィ検診、開始10年は有害性が勝る可能性

提供元:ケアネット

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公開日:2012/01/27

 



マンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検診の導入により、検診開始から10年間は有害性が勝る可能性があることが、英国・Southampton大学のJames Raftery氏らの検討で示された。マンモグラフィによるスクリーニング検診は、人命を救う一方で、偽陽性によりQOLを損ない、不要な治療を強いる場合もある。有害性(harm)が有益性(benefit)を上回ることも示唆されているが、これを定量的に評価した試験はないという。BMJ誌2012年1月14日号(オンライン版2011年12月8日号)掲載の報告。

検診の有益性と有害性をQALYで評価




研究グループは、イギリスにおけるマンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検診導入の論拠となったForrest報告の解析データを更新することで、「マンモグラフィ・スクリーニング検診は有益性よりも有害性が勝る」とするコクランレビューの主張の検証を行った。

対象は50歳以上の女性とした。Forrest報告の結果を再現したのち、系統的なレビューや臨床試験などのデータを用いて更新、拡張する生命表モデルを開発した。

主要評価項目は、スクリーニング検診によって得られる生存年と、偽陽性および手術によるQOLの損失を統合した質調整生存年(QALY)とした。
純累積QALY推定値が半分以下に低下




20年後の純累積QALYの推定値は、有害性の影響によって3,301から1,536へと半分以下に低下した。

コクランレビューによるQALY推定値は、スクリーニング検診開始から7年間は最良の場合でもネガティブで、10年後に70となり、20年後は834であった。

感度分析では、これらの結果は広範な頑健性を示し、特に最初の10年は頑健性が高かった。また、手術の有害性の程度やその期間が重要であることも示唆された。

著者は、「この解析は、マンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検診の導入により、検診開始から10年間は有害性が勝る可能性があるとの主張を支持するもの」と結論し、「Forrest報告は必要な手術に限定してQOLを評価し、その他の有害性はすべて除外しているが、今回の解析は偽陽性や不要な手術による有害性も含めたため、このような違いが生じたと考えられる」としている。

(菅野守:医学ライター)