自己免疫疾患によって肺塞栓症のリスクが有意に増大し、特に入院1年目のリスクが高いことが、スウェーデン・ルンド大学のBengt Zoller氏らの調査で示された。肺塞栓症は静脈血栓塞栓症の致死的な合併症で、自己免疫疾患は入院患者における静脈血栓塞栓症のリスク因子であることが示唆されている。これまでに静脈血栓塞栓症と自己免疫疾患の関連を検討した試験の多くは小規模で、ほとんどが特定の自己免疫疾患に限定した研究だという。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年11月26日号)掲載の報告。
スウェーデンにおける40年以上の全国規模の追跡調査
研究グループは、スウェーデンにおける自己免疫疾患と肺塞栓症の関連を検証する全国規模の追跡調査を実施した。
1964年1月1日~2008年12月31日の間に、自己免疫疾患と診断され、過去に静脈血栓塞栓症による入院歴のない患者を対象とし、肺塞栓症の発症状況について追跡調査した。
スウェーデンの全居住者の情報が登録されたMigMed2データベースから個々の住民のデータを取得した。一般住民を参照集団(reference population)とし、年齢、性別などの変数で調整した肺塞栓症の標準化罹患比(SIR)を算出した。
入院1年目のSIRは6.38、その後は経時的にリスクが低下
1964~2008年に、53万5,538人(女性:33万5,686人、男性:19万9,852人)が33種の自己免疫疾患で入院した。
自己免疫疾患による入院の1年目に肺塞栓症を発症する全体のリスクは、SIRで6.38(95%信頼区間[CI]:6.19~6.57)であった。33種の自己免疫疾患のすべてで、入院1年目の肺塞栓症の発症リスクが有意に増大しており、なかでも免疫性血小板減少性紫斑病(SIR:10.79、95%CI:7.98~14.28)、結節性多発動脈炎(同:13.26、9.33~18.29)、多発性筋炎/皮膚筋炎(同:16.44、11.57~22.69)、全身性エリテマトーデス(同:10.23、8.31~12.45)が高リスクであった。
全体のリスクは経時的に低下し、SIRは1~5年後に1.53(95%CI:1.48~1.57)、5~10年後には1.15(同:1.11~1.20)、10年以降は1.04(同:1.00~1.07)となった。リスクの増大は性別や年齢層の区別なく認められた。
著者は、「自己免疫疾患は入院1年目の肺塞栓症の発症リスクを増大させた」と結論し、「自己免疫疾患は凝固性亢進性(hypercoagulable)の病態ととらえるべきである」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)