ライソゾーム病の遺伝子変異を有する新生児は予想以上に多く、その新生児スクリーニングは、今後、プライマリ・ケアの課題として浮上する可能性があることが、オーストリア・ウイーン医科大学のThomas P Mechtler氏らの検討で示された。ライソゾーム病はまれな疾患と考えられているが、白人の発症率は生児出生7,700人に1人の割合、アラブ人では先天性代謝異常の3分の1がこれらの疾患に起因するとされる。新開発の酵素補充療法、早期診断の必要性、技術的進歩により、ライソゾーム病の新生児スクリーニングへの関心が高まっているという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年11月30日号)掲載の報告。
新生児スクリーニングの実用性を評価
研究グループは、オーストリアにおいてゴーシェ病、ポンペ病、ファブリー病、ニーマン-ピック病A型およびB型の新生児スクリーニングの実用性と妥当性を評価するために、遺伝子変異解析を含む無記名の前向き試験を全国規模で実施した。
2010年1月~7月までに、全国的な定期新生児スクリーニングプログラムの一環として、3万4,736人の新生児の乾燥血液スポット標本を収集した。
無記名標本を用い、複数の疾患を同時に検出可能なエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析法(ESI-MS)にて、β-グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病)、α-ガラクトシダーゼ(ファブリー病)、α-グルコシダーゼ(ポンペ病)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ニーマン・ピック病A、B型)の酵素活性を解析した。酵素欠損が疑われる標本について遺伝子変異解析を行った。
酵素活性低下の38人中15人がライソゾーム病
3万4,736人の全標本が、ESI-MSを用いた多重スクリーニング法で解析された。38人の新生児に酵素活性の低下が認められ、そのうち15人に遺伝子変異解析でライソゾーム病が確認された。
最も頻度の高い遺伝子変異はファブリー病(新生児3,859人に1人)で、次いでポンペ病(8,684人に1人)、ゴーシェ病(1万7,368人に1人)の順であった。陽性予測値はそれぞれ32%(95%信頼区間:16~52)、80%(同:28~99)、50%(同:7~93)だった。遺伝子変異は、主に晩期発症の表現型に関連するミスセンス変異であった。
著者は、「ライソゾーム病の遺伝子変異を有する新生児の割合は予想以上に高かった。ライソゾーム病の新生児スクリーニングは、今後、プライマリ・ケアの課題として浮上する可能性がある」と結論し、「晩期発症型の遺伝子変異の頻度が高かったことから、ライソゾーム病は小児期以降に及ぶ広範な健康問題になると予測される」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)