冠動脈心疾患(CHD)の診断では、マルチパラメトリックな心血管核磁気共鳴法(CMR)が、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)に比べ高い正確度(accuracy)を有することが、英国・リーズ大学のJohn P Greenwood氏らが行ったCE-MARC試験で確認された。近年、CHD疑い患者における心筋梗塞の評価では、トレッドミル運動負荷試験に代わりSPECTが最も頻用されているが、診断正確度の報告にはばらつきがみられ、電離放射線曝露の問題もある。CMRは被曝がなく、高い空間分解能を持つほかに、1回の検査で複数の病理学的パラメータ(心機能、心筋血流、心筋生存能、冠動脈の解剖学的形態など)の評価が可能だという。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月23日号)掲載の報告。
CMRとSPECTの診断正確度を比較する前向き無作為化試験
CE-MARC試験の研究グループは、CHD疑い患者において、X線冠動脈造影を標準対照としてマルチパラメトリックCMRプロトコールの診断正確度を評価し、CMRとSPECTを比較するプロスペクティブな無作為化試験を実施した。
対象は、狭心症疑いおよび心血管リスク因子を1つ以上有する患者であり、CMR、SPECT、侵襲的なX線冠動脈造影が施行された。CMRは、安静時とアデノシン負荷時、シネ画像、ガドリニウム造影遅延画像、3次元冠動脈MRAを撮像した。アデノシン負荷時と安静時の心電図同期SPECTには99mTc tetrofosminを使用した。
主要評価項目はCMRの診断正確度とした。
感度と陰性予測値が有意に優れる
2006年3月~2009年8月までに、イギリスの2施設から752例が登録され、39%がX線冠動脈造影でCHDと診断された。
CMRの感度は86.5%、特異度は83.4%、陽性予測値は77.2%、陰性予測値は90.5%であった。これに対し、SPECTの感度は66.5%、特異度は82.6%、陽性予測値は71.4%、陰性予測値は79.1%であった。
CMRはSPECTに比べ、感度および陰性予測値が有意に優れた(いずれもp<0.0001)が、特異度(p=0.916)と陽性予測値(p=0.061)に差は認めなかった。
著者は、「CE-MARC試験は実臨床におけるCMRの評価に関する大規模な前向き試験であり、CMRによるCHDの高い診断正確度が示され、そのSPECTに対する優位性が確認された」と結論し、「CHDの研究では、今後、よりいっそう広範にCMRを使用すべきである」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)