直接的レニン阻害薬と他のRAS阻害薬の併用で高カリウム血症増加

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/17

 



直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)は、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させることが、カナダ・トロント大学のZiv Harel氏らの検討で示された。アリスキレンなどのレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、うっ血性心不全や高血圧、蛋白尿などのさまざまな病態の管理に用いられているが、他のRAS阻害薬との併用における重篤な合併症として高カリウム血症や急性腎障害が知られている。アリスキレンと他のRAS阻害薬の併用に関する試験の多くは代用アウトカム(surrogate outcome)を用いているため、真の有害事象の検出能は低いという。BMJ誌2012年2月4日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。

アリスキレンの安全性をメタ解析で評価




研究グループは、他のRAS阻害薬との併用におけるアリスキレンの安全性を検証するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。

Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび2つの臨床試験のレジストリーを用いて、2011年5月7日までに出版された文献を検索した。

アリスキレンとアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用療法と、これらの薬剤の単剤療法を比較した無作為化対照比較試験(治療期間4週以上)のうち、有害事象として高カリウム血症と急性腎障害に関する数値データを提示した試験を抽出した。変量効果モデルを用いて総合リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。
併用時は血清カリウム濃度のモニタリングを




10試験、4,814例が解析の対象となった。アリスキレンとACE阻害薬またはARBの併用療法では、ACE阻害薬単剤やARB単剤(相対リスク:1.58、95%CI:1.24~2.02)あるいはアリスキレン単剤(同:1.67、1.01~2.79)に比べ、高カリウム血症が有意に増加した。

急性腎障害のリスクについては、併用療法と単剤療法で有意な差は認めなかった(相対リスク:1.14、95%CI:0.68~1.89)。

著者は、「アリスキレンは、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させる」と結論し、「これらの薬剤を併用する場合は、血清カリウム濃度の注意深いモニタリングを要する」と注意を喚起している。

(菅野守:医学ライター)