治療を終えたがん患者では、運動によってQOLの改善を含め種々の好ましい効果が得られることが、中国・香港大学のDaniel Y T Fong氏らの検討で示された。がんサバイバー(cancer survivor)は、治療終了後に診断前と同等の生活を期待するが、治療の影響で疲労感が増大したり、身体活動性やQOLが低下することが多い。がん治療を完遂した患者における運動の効果に関する最近のメタ解析では、試験の不均一性の増大が指摘されており、その原因は異なるドメインあるいは異なる方法でアウトカムを評価した試験が混在しているためだという。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。
治療を終えたがん患者における運動の効果を評価
研究グループは、がん治療を完遂した成人がん患者における運動の効果を評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。
2名の研究者が別個に、データベース(CINAHL、Google Scholar)を検索し、メタ解析や総説の文献を調査して、試験データの抽出と試験の質の評価を行った。対象は、ホルモン療法を除くがん治療を受けた成人患者における運動の効果を評価した無作為化対照比較試験であった。
34試験を解析、22試験は乳がん患者が対象
34の無作為化対照比較試験が解析の対象となり、そのうち22試験(65%)が乳がん患者に関するものであった。多くが有酸素運動の効果を評価した試験で、筋力トレーニングを加えた試験もあった。運動期間(中央値)は13週(3~60週)で、多くの試験が無運動群を対照群としていた。
乳がん患者の試験では、運動によりインスリン様成長因子(IGF)-1、ベンチプレス、レッグプレス、疲労、うつ状態、QOLの改善が得られた。他の癌種の試験を統合すると、体格指数(BMI)、体重、最大酸素消費量、最大パワー出力、6分間歩行距離、右手握力、QOLの有意な改善効果が認められた。
試験の不均一性の原因としては、年齢、試験の質、試験の規模、運動のタイプや期間が考えられた。本研究の結論には出版バイアスの影響はなかった。
著者は、「運動は、治療を終えた乳がん患者の生理機能、身体組成、身体機能、心理的なアウトカム、QOLに良好な効果を示した。乳がん以外のがん患者でも、運動はBMIや体重の減少などとともにQOLを改善し、好ましい効果が確認された」とまとめている。
(菅野守:医学ライター)