大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。
5万3,000例余りを10年間追跡
研究グループは、症状のない50~69歳の成人を対象とした無作為化対照試験で、1回の大腸内視鏡検査を実施された被験者(2万6,703例)と、2年ごとにFITを実施された被験者(2万6,599例)について、10年後の大腸がんによる死亡を主要評価項目として比較を行った。
本報告は中間報告で、基線スクリーニングの終了時点における参加率、診断所見、重大な合併症の発生率が示された。研究結果は、intention-to-screenを受けた集団とas-screenedを受けた集団それぞれの分析が示された。
大腸がんの発見率は両群で同程度
結果、参加率は、FIT群のほうが内視鏡群より高かった(34.2%対24.6%、P<0.001)。大腸がんが発見されたのは、内視鏡群30例(0.1%)、FIT群33例(0.1%)だった(オッズ比:0.99、95%信頼区間:0.61~1.64、P=0.99)。
進行腺腫は、内視鏡群514例(1.9%)で、FIT群では231例(0.9%)で認められ(同:2.30、1.97~2.69、P<0.001)、非進行腺腫は、内視鏡群で1,109例(4.2%)、FIT群で119例(0.4%)に認められた(同:9.80、8.10~11.85、P<0.001)。
これらの結果からQuintero氏は、「内視鏡群よりFIT群のほうがスクリーニングへの参加率が高く、基線スクリーニング検査の結果に関しては、大腸がんが発見された被験者数は両群で同程度であった。腺腫の特定は内視鏡群ではより多かった」と報告している。
(朝田哲明:医療ライター)