扁平上皮がんを除く早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例を高精度で判別する分子アッセイが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohannes R Kratz氏らによって開発された。早期のNSCLCは、切除術時に検出されなかった転移病変が原因で再発することが多い。これらの患者の管理では予後の予測が重要で、潜在病変を有する可能性が高い患者を同定する必要がある。Lancet誌2012年3月3日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。
再発リスクの高い患者を同定する分子アッセイを開発し、妥当性を検証
研究グループは、扁平上皮がんを除くNSCLCのリスク分類において、従来の判定法で早期病変とされた患者のうち切除術後の治療不成功の可能性が高い例を同定する際に、実用的で信頼性の高い分子アッセイを開発し、その妥当性の検証を行った。
アッセイの開発には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で切除術を受けた扁平上皮がん以外のNSCLC患者コホート(361例)を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料を作製して定量的PCR解析を行い、統計学的な予後予測法で患者を判別する14遺伝子の発現アッセイを開発した。
次いで、カイザー・パーマネンテの研究部門によってアッセイの妥当性の検証が行われた。この妥当性確認試験は、カイザー・パーマネンテ北カリフォルニア病院で切除術を受けた扁平上皮がんを除くStage IのNSCLC患者のマスクされたコホート(433例)、および中国臨床試験コンソーシアム(CCTC)の一部として中国の主要ながんセンターで切除術を施行された扁平上皮がん以外のStage I~III NSCLC患者コホート(1,006例)で行われた。
NCCN判定基準よりも高い正確度を達成
カイザー妥当性検証コホートに関するKaplan-Meier法による解析では、低リスク例の5年全生存率は71.4%、中リスク例は58.3%、高リスク例は49.2%であった(傾向性検定:p=0.0003)。CCTCコホートに関する同様の解析では、5年全生存率は低リスク例74.1%、中リスク例57.4%、高リスク例44.6%だった(傾向性検定:p<0.0001)。
多変量解析では、いずれのコホートにおいても、腫瘍の遺伝子発現に基づく予後予測情報をもたらす臨床的リスク因子は認めなかった。このアッセイによって、Stage I NSCLCのうち高リスク例の予測の正確度が、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)判定基準に比べて有意に改善され(p<0.0001)、全Stageで低リスク、中リスク、高リスク例の判別が可能であった。
著者は、「われわれが開発した実用性の高い定量的PCRに基づくアッセイは、扁平上皮がんを除く早期NSCLC患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例の同定において高い信頼性を示した」と結論している。
(菅野守:医学ライター)