薬剤溶出ステントは冠動脈の再狭窄を減少させるものの、末梢動脈での有効性は臨床試験では証明されていなかった。そのため下肢血管形成術における、パクリタキセルでコーティングされた血管形成術用バルーンと、血管造影剤に溶解したパクリタキセルの効用について調査が、エーベルハルト・カール大学(ドイツ)Gunnar Tepe氏らによって行われた。NEJM誌2008年2月14日号より。
大腿膝下動脈で遠隔期損失径を比較
調査は、大腿膝窩動脈の狭窄、または閉塞を伴う患者154例を、パクリタキセルでコーティングされた標準的バルーンカテーテルによる治療群、コーティングなしのバルーン+造影剤に溶解したパクリタキセル治療群、コーティング・バルーンも含有造影剤もなしの群(対照群)にランダムに割り付け、小規模の多施設共同試験を行った。
主要評価項目は6ヵ月後の遠隔期損失径。
患者の平均年齢(±SD)は68歳(±8)、喫煙者が24%、そして糖尿病が49%だった。病変の27%は完全閉塞、36%は再狭窄であった。平均の病変長は7.4±6.5 cmで、治療群間のベースライン特性には有意差がなかった。パクリタキセル・コーティングに起因する有害事象は認められなかった。
パクリタキセル・コーティング・バルーンで有意な効果
6ヵ月後の対照群の遠隔期損失径の平均値は1.7±1.8mm、一方、パクリタキセル・コーティング・バルーンによる治療群は0.4±1.2mm(P<0.001)、パクリタキセル溶解造影剤による治療群は2.2±1.6mm(P = 0.11)だった。
6ヵ月の標的部位の血行再建術施行率は対照群で54例中20例(37%)だったが、パクリタキセル・コーティング・バルーン治療群では48例中2例(4%)(P<0.001対対照群)、パクリタキセル溶解造影剤治療群では52例中15例(29%)(P = 0.41対対照群)だった。24ヵ月後にはそれぞれ、54例中28例(52%)、48例中7例(15%)、52例中21例(40%)に増加した。
これらから研究グループは、大腿膝窩動脈疾患の経皮的治療におけるパクリタキセル・コーティング・バルーンを用いた血管形成術は、遠隔期損失径と標的部位の血行再建術の有意な減少と関連していたが、パクリタキセル含有造影剤による有意な効果は確かめられなかったと報告している。
(朝田哲明:医療ライター)