小児の重度熱傷では、受傷面積が大きくなるほど不良な予後のリスクが増大し、熱傷面積が全体表面積の62%を超えると死亡のリスクが有意に上昇することが、米国・テキサス大学医学部シュライナー小児病院のRobert Kraft氏らの検討で示された。1998年、Ryanらは熱傷患者の予後予測モデルを開発し、不良な予後の予測因子として熱傷面積が全体表面積の40%に及ぶ場合を提唱した。しかし、その後の10年で熱傷治療は大きな発展を遂げ、生存および予後はさらに改善されたという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。
小児の熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を前向きに評価
研究グループは、小児における熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を評価するために、単施設におけるプロスペクティブな観察コホート試験を実施した。
解析には全体表面積の30%以上の熱傷を受けた小児の臨床データを用いた。熱傷面積30~100%の患児を10%ごとに7群に分け、各群の予後を比較した。カットオフ値の算出には、受信者動作特性(ROC)分析を用いた。
熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設へ
1998~2008年までに、テキサス大学医学部シュライナー小児病院(ガルベストン)に952例の重度熱傷患児が入院した。全体の平均年齢は7.3歳で、男児が628例(66%)であった。
123例(13%)が死亡し、そのうち熱傷面積30~39%の群の死亡率が3%(5/180例)であったのに対し、90~100%の群は55%(28/51例)と有意に高かった(p<0.0001)。154例(16%)が多臓器不全をきたしたが、熱傷面積30~39%群の6%(10/180例)に比べ90~100%群は45%(23/51例)と有意に高値であった(p<0.0001)。敗血症は9%(89例)が発症し、30~39%群の2%(3/180例)に対し90~100%群は26%(13/51例)と、やはり有意差を認めた(p<0.0001)。
死亡に関するROC分析では、熱傷面積が62%を超えると死亡リスクが有意に上昇した(オッズ比:10.07、95%信頼区間:5.56~18.22、p<0.0001)。
著者は、「熱傷後の合併症罹患や死亡リスクの受傷面積閾値はおよそ60%であった」とし、「これらの知見に基づき、熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設に搬送することが推奨される。さらに、熱傷面積が大きくなると不良な予後のリスクが増大することから、熱傷専門施設では最大限の注意を払って治療を進め、さらなる治療法の改善に努めるべきである」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)