服毒に対する活性炭投与は死亡率を抑制しない

提供元:ケアネット

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公開日:2008/02/28

 

開発途上の農業国では、意図的な自己服毒に毒性の強い農薬や植物を用いるため、先進国に比べ致死率が10~50倍も高いという。今回、スリランカで実施された無作為化試験により、腸血管や腸肝循環の一時的な遮断を目的に自己服毒患者に対しルーチンに施行されている活性炭の投与は死亡率を抑制しないことが明らかとなった。英国Oxford大学熱帯医学研究所のMichael Eddleston氏らがLancet誌2008年2月16日号で報告した。

活性炭1回投与、6回投与、非投与を比較する無作為化試験




本研究は、活性炭50gの1回投与、同6回投与(4時間ごと)、非投与の3群を比較する無作為化対照比較試験である。2002年3月~2004年10月の間にスリランカの3つの病院に4,632例が登録され、非投与群に1,554例、6回投与群に1,533例、1回投与群に1,545例が無作為に割り付けられた。

アウトカムが評価可能であったのは4,629例(1回投与群の1例、6回投与群の2例がフォローアップ不可)。そのうち2,338例(51%)が農薬を、1,647例(36%)が黄花夾竹桃(キバナキョウチクトウ、yellow oleander、Thevetia peruviana)の種子を摂取していた。主要評価項目は死亡率。

死亡率は3群とも




試験期間中に311例が死亡し、全体の死亡率は6.7%であった。そのうち非投与群が105例(6.8%)であったのに対し、6回投与群は97例(6.3%)(補正オッズ比:0.96、95%信頼区間:0.70~1.33)、1回投与群は109例(7.1%)(1.11、0.82~1.52)といずれも有意差を認めず、両投与群間(0.87、0.64~1.18)にも差は見られなかった。

農薬の摂取者、黄花夾竹桃種子の摂取者はともに、入院時の重症度および服毒から治療までの時間と活性炭投与との間に明確な関連は見られなかった。

Eddleston氏は、「活性炭の早期投与が有用で経済的に無理のない治療法か否かについてはさらなる検討を要するが、アジア太平洋地域の農業国では自己服毒患者に対する活性炭のルーチン投与は推奨されない」と結論したうえで、「不必要な死を防止する効果的な治療法および新たな治療介入法を見つけ出すための臨床試験を実施することが喫緊の課題である」と訴えている。

(菅野守:医学ライター)