ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。
DPP-4阻害薬の有効性と安全性をメタ解析で評価
研究グループは、2型糖尿病の成人患者におけるDPP-4阻害薬の有効性と安全性の評価を目的に、無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。
論文の収集には、データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)、会議記録、試験登録、製薬会社のウェブサイトを使用した。解析の対象は、単独療法としてのDPP-4阻害薬とメトホルミンあるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬と他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、グルカゴン様ペプチド1[GLP-1]作動薬、基礎インスリン)を比較した無作為化対照比較試験であり、HbA1cのベースラインからの変動について評価した試験とした。
主要評価項目はHbA1cの変動、副次的評価項目はHbA1c<7%達成率、体重の変化、有害事象による治療中止率、重篤な有害事象の発生率などとした。
HbA1c低下効果はメトホルミンに劣るが、悪心、下痢、嘔吐が少ない
1万3,881例が参加した19試験に関する27編の論文が解析の対象となった。DPP-4阻害薬群は7,136例、他の血糖降下薬群は6,745例だった。抄録のみの1試験を除き、主要評価項目に関するバイアスのリスク評価を行ったところ、3論文では低かったが、9論文は不明、14論文は高いという結果だった。
メトホルミン単独療法との比較では、DPP-4阻害薬はHbA1c低下効果(加重平均差[WMD]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.08~0.32)および体重減少効果(WMD:1.5、95%CI:0.9~2.11)が低かった。二次治療におけるDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果はGLP-1作動薬に比べて劣り(WMD:0.49、95%CI:0.31~0.67)、ピオグリタゾンとは同等で(WMD:0.09、95%CI:-0.07~0.24)、HbA1c<7%の達成率はスルホニル尿素薬を上回らなかった(リスク比:1.06、95%CI:0.98~1.14)。
体重の変動については、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬(WMD:-1.92、95%CI:-2.34~-1.49)やピオグリタゾン(WMD:-2.96、95%CI:-4.13~-1.78)よりも良好だったが、GLP-1作動薬ほどではなかった(WMD:1.56、95%CI:0.94~2.18)。
二次治療としてのDPP-4阻害薬とメトホルミン単独あるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬、ピオグリタゾン、GLP-1作動薬に関する試験では、いずれの治療群も低血糖の発生数は最小限であった。メトホルミン+DPP-4阻害薬とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の比較試験のほとんどでは、低血糖のリスクはスルホニル尿素薬を含む群でより高かった。
重篤な有害事象の発生率はピオグリタゾンよりもDPP-4阻害薬で低かった。悪心、下痢、嘔吐の発生率はDPP-4阻害薬よりもメトホルミンやGLP-1作動薬で高かった。鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症のリスクはDPP-4阻害薬と他の薬剤で差はなかった。
著者は、「DPP-4阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を有するが、コストや長期的な安全性についても考慮する必要がある」と結論している。
(菅野守:医学ライター)