がんでアルツハイマー病のリスクが低下?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/04/13

 



がん患者はアルツハイマー病のリスクが低く、アルツハイマー病患者はがんのリスクが低下するという逆相関の関係がみられることが、米ボストン退役軍人医療センターのJane A Driver氏らの検討で示された。パーキンソン病ではがんのリスクが低減し、がんと神経変性疾患は遺伝子や生物学的経路を共有することが示されている。がんとアルツハイマー病の発症は逆相関することが示唆されているが、この関係はがんサバイバーに限定的な死亡の結果(アルツハイマー病発症年齢に達する前に死亡)なのか、それともアルツハイマー病患者におけるがんの過小診断(重度認知障害患者ではがん症状の検査が少ない)によるものかは不明だという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。

フラミンガム心臓研究のデータを使用した前向きコホート試験




研究グループは、フラミンガム心臓研究のデータを用いてがんとアルツハイマー病のリスクの関連を評価し、アルツハイマー病の有無別のがんのリスクを推定するために、地域住民ベースのプロスペクティブなコホート試験および年齢、性別をマッチさせたコホート内症例対照試験を実施した。

対象はベースライン(1986~1990年)時の年齢が65歳以上で、認知症がみられない1,278人とし、がんの既往歴の有無に分けて解析した。アルツハイマー病とがんのリスクのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。
喫煙関連がん患者ではアルツハイマー病リスクが約4分の1に低下




平均フォローアップ期間10年の間に、221人がアルツハイマー病の可能性ありと診断された。年齢、性別、喫煙状況で調整すると、がんサバイバーは非がん者に比べアルツハイマー病のリスクが有意に低かった(HR:0.67、95%CI:0.47~0.97)。特に、喫煙関連がん患者のアルツハイマー病リスク(HR:0.26、95%CI:0.08~0.82)は、非喫煙関連がん患者(HR:0.82、95%CI:0.57~1.19)に比べ低下していた。

このアルツハイマー病のリスク低下とは対照的に、喫煙関連がん患者は脳卒中のリスクが2倍以上に増大していた(HR:2.18、95%CI:1.29~3.68)。コホート内症例対照試験では、アルツハイマー病患者は対照群に比べがんのリスクが有意に約60%低下していた(HR:0.39、95%CI:0.26~0.58)。

著者は、「がんサバイバーは非がん者に比べアルツハイマー病のリスクが低く、アルツハイマー病患者はがんのリスクが低下していた」と結論し、「アルツハイマー病のリスクは喫煙関連がん患者で最も低く、これは生存バイアスのみでは十分には説明できない。このパターンはがんとパーキンソン病の関連に類似しており、がんと神経変性疾患には逆相関の関係があることが示唆される」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)