現金給付プログラム、就学中の若年女性のHIV、HSV-2感染を抑制

提供元:ケアネット

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公開日:2012/04/19

 



現金給付プログラムは、低所得層の就学若年女性においてHIVおよび単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)の感染を抑制するが、すでに退学している場合は効果がないことが、米国・ジョージ・ワシントン大学のSarah J Baird氏らがアフリカで行った調査で示された。世界のHIV感染者の3分の2がサハラ砂漠以南の地域に居住しており、その60%が女性だ。世界の新規感染者の45%が15~24歳の若年者であり、この年齢層の感染率は女性が男性の2倍以上だという。教育の不足や男性への経済的依存が、女性のHIV感染の重大なリスク因子であることが示唆されている。Lancet誌2012年4月7日号(オンライン版2012年2月15日号)掲載の報告。

現金給付プログラムの有効性をクラスター無作為化試験で評価




研究グループは、若年女性の性感染症のリスク低減における現金給付プログラムの有効性を評価するクラスター無作為化試験を実施した。

マラウイ・ゾンバ地方の176の調査地区から13~22歳の未婚女性が登録された。調査地区を1対1の割合で、現金給付を行う群(介入群)あるいは介入を行わない群(対照群)に無作為に割り付けた。介入群の地区は、さらに給付の要件として就学を求める群と求めない群に分けられた。

介入群の参加者は、くじ引きによる抽選で毎月1、2、3、4、5ドルのいずれかを受け取り、各世帯は毎月4、6、8、10ドルのいずれかを受給した。ベースラインと12ヵ月後に行動リスク評価を行い、18ヵ月後には血清検査を実施した。主要評価項目は、18ヵ月後のHIVおよびHSV-2の有病率とした。

性行動の変容を直接目標としない構造的介入の有用性を示唆




介入群には88地区が割り付けられ、2008年1月~2009年12月までに各年10回ずつの現金給付が行われた。対照群にも88地区が割り付けられた。

ベースライン時に就学していた1,289人の解析では、18ヵ月後のHIVの加重有病率は介入群が1.2%と、対照群の3.0%に比べ有意に低下した(調整オッズ比[OR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.14~0.91)。HSV-2の加重有病率も、介入群は0.7%であり、対照群の3.0%に比し有意に改善された(調整OR:0.24、95%CI:0.09~0.65)。

介入群のうち、給付に就学を求められた群と就学しなくても給付を受けた群の間に、HIV加重有病率(1% vs. 2%)およびHSV-2加重有病率(1% vs. <1%)の差はみられなかった。ベースライン時に就学していなかった群では、介入群と対照群でHIV加重有病率(10% vs. 8%)およびHSV-2加重有病率(8% vs. 8%)の差を認めなかった。

著者は、「現金給付プログラムにより、低所得層の青年期女学生におけるHIV、HSV-2感染の改善が可能と考えられる」と結論しており、「性行動の変容を直接的なターゲットとはしない構造的介入は、HIV感染の予防戦略の重要なコンポーネントとなる可能性がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)