高齢者の心電図異常は、その程度にかかわらず、冠動脈性心疾患イベント発生リスク増大と関連することが明らかにされた。軽度の場合は約1.4倍に、重度では約1.5倍に、それぞれ同リスクが増大するという。また、従来のリスク因子による予測モデルに、心電図異常の要素を盛り込むことで、同イベント発生に関する予測能が向上することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のReto Auer氏らが、高齢者2,000人超について約8年間追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月11日号で発表した。
心血管疾患のない70~79歳、試験開始時と4年後に心電図測定
研究グループは、「健康と加齢、身体計測スタディ」(Health, Aging, and Body Composition Study)の参加者の中から、基線で心血管疾患のない70~79歳2,192人を追跡し、心電図異常と冠動脈性心疾患イベントとの関連を検討した。追跡は、1997~1998年と2006~2007年との8年間にわたって行われた。試験開始時点と4年後に心電図測定を行い、ミネソタ分類により軽度・重度別に分け分析した。
またCox比例ハザード回帰モデルを用いて、従来のリスク因子に心電図異常を追加することによる、冠動脈性心疾患イベントの予測能が改善するかどうかも検証した。
試験開始時の心電図異常、冠動脈性心疾患イベントリスクを軽度で1.35倍、重度で1.51倍に
その結果、試験開始時点で心電図異常が認められたのは、軽度が276人(13%)、重度が506人(23%)だった。追跡期間中、冠動脈性心疾患イベントが発生したのは、351人(冠動脈性心疾患死:96人、急性心筋梗塞:101人、狭心症または冠動脈血行再建術による入院:154人)だった。
試験開始時点の心電図異常が軽度でも重度でも、従来のリスク因子補正後の冠動脈性心疾患イベントリスクの増大と関連しており、正常群の同イベント発生率が17.2/1,000人・年に対し、軽度異常群の同発生率は29.3/1,000人・年(ハザード比:1.35)、重度異常群の同発生率は31.6/1,000人・年(ハザード比:1.51)だった。
また、従来のリスク因子に心電図異常を盛り込み、予測モデルをつくったところ、従来のリスク因子のみのモデルより、その予測能は向上することが認められた。
試験開始4年時点で、新たに心電図異常が認められたのは208人、初回測定時に続き異常が認められたのは416人で、いずれの場合も、冠動脈性心疾患イベント発生リスクは増大した(それぞれ、ハザード比:2.01、同:1.66)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)