青少年の慢性疲労症候群の治療法として、インターネットベースの認知行動療法プログラム(FITNET)が有効なことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターWilhelmina子ども病院のSanne L Nijhof氏らの検討で示された。慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎、筋痛性脳症)は持続的な疲労感と重度の身体機能低下を特徴とし、青少年では長期化することが多く、学業や社会的発育に悪影響を及ぼす。治療法として有望と考えられる認知行動療法は、専門的な技能を要するためその利用は限定的なのが現状だが、インターネットの使用によってアクセスが容易になる可能性が示唆されている。Lancet誌2012年4月14日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。
インターネットベースの治療法の効果を評価する無作為化対照比較試験
研究グループは、慢性疲労症候群の青少年に対するインターネットベースの専用治療プログラム“Fatigue In Teenagers on the interNET(FITNET)”を開発し、その効果を通常ケア(対照)と比較した。
対象は、ユトレヒト大学医療センターWilhelmina子ども病院を受診した12~18歳の慢性疲労症候群患者。これらの患者がFITNET群と通常ケア群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。試験は非盲検下に行われた。
FITNETプログラムは、心理教育セクションと認知行動療法セクションからなり、インターネットや電話を介して専門の心理療法士がサポートを行った。主要評価項目は、就学状況、疲労の重症度、身体機能とし、6ヵ月後にコンピュータ化された質問票で評価を行った。
出席率、重度疲労の消失、身体機能改善、自己評価がいずれも有意に良好
135例が登録され、FITNET群に68例が、通常ケア群には67例が割り付けられ、それぞれ67例、64例で評価が可能であった。
FITNET群は、6ヵ月後、3つの主要評価項目のすべてが、通常ケア群に比べ有意に良好だった。すなわち、学校の欠席率が10%以下の患者の割合はFITNET群75%(50/67例)、通常ケア群16%(10/64例)で相対リスクは4.8(95%信頼区間:2.7~8.9、p<0.0001)、重度疲労なしの患者はそれぞれ85%(57/67例)、27%(17/64例)で相対リスクは3.2(同:2.1~4.9、p<0.0001)、身体機能正常の患者は78%(52/67例)、20%(13/64例)で相対リスクは3.8(同:2.3~6.3、p<0.0001)であった。
自己評価で「完全に回復した」あるいは「かなりよくなったが、まだ少し症状があると思う」と答えた患者は、FITNET群が78%(52/67例)と、通常ケア群の27%(17/64例)に比べ有意に高率だった(相対リスク:2.9、95%信頼区間:1.9~4.5、p<0.0001)。重篤な有害事象の報告はなかった。
著者は、「12ヵ月の再評価でも効果は持続しており、FITNETプログラムは慢性疲労症候群の青少年にとってアクセスが容易で高い効果が得られる治療法である」と結論している。
(菅野守:医学ライター)