高齢者の早期腎臓がんは、腎部分切除のほうが根治的腎摘出術よりも生存率が高いことが示された。全死亡リスクは、腎部分切除が根治的腎摘出術に比べ、およそ半減するという。米国・ミシガン大学のHung-Jui Tan氏らが、ステージT1aの腎臓がん患者7,000人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月18日号で発表した。
高齢者の早期腎臓がん患者を中央値62ヵ月追跡
研究グループは、メディケア受給者で、1992~2007年に腎部分切除または根治的腎摘出術を行った、ステージT1aの腎臓がん患者7,138人について、後ろ向きコホート試験を行い、両者のアウトカムを比較した。
主要アウトカムは、全死亡率、腎臓がん死亡率であった。
被験者のうち腎部分切除を行ったのは1,925人(27.0%)、根治的腎摘出術を行ったのは5,213人(73.0%)だった。
結果、追跡期間中央値62ヵ月の間に死亡したのは、腎部分切除群487人(25.3%)、根治的腎摘出術群2,164人(41.5%)だった。
治療2、5、8年後の生存率予測値、腎部分切除群で5.6~15.5%ポイント高い
腎臓がんによる死亡は、腎部分切除群は37人(1.9%)、根治的腎摘出術群は222人(4.3%)だった。2段階RIM(residual inclusion model)分析の結果、腎部分切除は根治的腎摘出術に比べ、全死亡リスクが約半分に減少した(ハザード比:0.54、95%信頼区間:0.34~0.85)。
また、治療2、5、8年後の生存率予測値も、腎部分切除群は根治的腎摘出術群に比べ、それぞれ5.6、11.8、15.5ポイント高かった(p<0.001)。
なお、腎臓がんによる生存率については、両治療群で有意差はなかった(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.19~3.49)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)