心不全では洞調律であっても、血栓塞栓イベントリスクが高く、ワルファリンやアスピリンが投与されることは少なくない。WARCEF(Warfarin vs. Aspirin in Reduced Cardiac Ejection Fraction)試験の結果、ワルファリンはアスピリンに比べ、虚血性脳卒中の発症リスクを軽減するものの、出血の発症リスクを増大させ、洞調律の心不全患者に対してワルファリン、またはアスピリンのどちらを投与すべきかという疑問に対する決定的なエビデンスは依然存在せず、個々の患者によって考慮すべきであることが、5月2日NEJM誌オンライン速報版に発表された。
ワルファリン vs アスピリン:死亡・脳卒中抑制に差なし
WARCEF試験に参加した、洞調律の左室駆出率が低下した心不全2,305例が、ワルファリンまたはアスピリンが投与される治療群に無作為に割り付けられた。ワルファリンはINRが2.0-3.5の範囲に収まるよう用量が調整された。
患者は平均3.5年間追跡され、追跡期間内の虚血性脳卒中、脳出血、死亡のいずれかの発現を主要評価項目として2つの治療の優劣が比較された。
主な結果は下記のとおり。
1. 主要評価項目(虚血性脳卒中、脳出血、死亡)の発現に、
両治療間で有意な差は認められなかった。
● ワルファリン群:7.47/100患者・年
● アスピリン群:7.93/100患者・年
ハザード比:0.93(95%信頼区間:0.79-1.10、P=0.40)
2. 時間が経過するに連れ、ワルファリン群で良好となり、
追跡4年目ではわずかではあるが、有意にワルファリンが
アスピリンを有意に上回った(P=0.046)。
3. 虚血性脳卒中の発現リスクは、ワルファリン群はアスピリン群に比べ
有意に少なかった。
● ワルファリン群:0.72/100患者・年
● アスピリン群:1.36/100患者・年
ハザード比:0.52(95%信頼区間:0.33-0.82、P=0.005)
4. 大出血の発現リスクは、ワルファリン群はアスピリン群に比べ
有意に多かった(P<0.001)。
● ワルファリン群:1.78/100患者・年
● アスピリン群:0.87/100患者・年
5. 脳内出血および頭蓋内出血は両群間で有意差なし(P=0.82)。
● ワルファリン群:0.27/100患者・年
● アスピリン群:0.22/100患者・年
(ケアネット 藤原 健次)