英医学部入試に導入された臨床適性試験UKCATの影響

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/05/11

 



英国では、医学部新入生の社会的背景枠を広げるための一つのイニシアティブとして、2006年より医学部入学者選考過程に、言語理解力や定量的推論、抽象的推論、決定分析の能力を試す臨床適性試験(UKCAT)を導入した。ダーラム大学のPaul A .Tiffin氏らは、UKCATが、特定の社会階層出身志願者の不利益を減少させたかを評価するため、2009年入学者選考を対象に前向きコホート研究を行った。結果、公正な機会を与えるものとなっており、「全員とまではいかないが、今よりも多くの、社会経済的低階層の学生を英国医師集団に迎え入れていくことになるだろう」と結論している。BMJ誌(オンライン版2012年4月17日号)掲載報告より。

2009年にUKCATを試験に取り入れている22の医学部を受けた8,459人を調査




研究グループは、入学プロセスの要件にUKCATを導入している英国大学協会会員の22医学部に2009年に志願した2万4,844人のうち、社会的背景などのデータが入手できた8,459人を対象とした。

主要評価項目は、7つの教育的および社会人口統計学的変数別にみたUKCATの試験採点への用い方(例えば境界例に用いる、入学の選別要因として用いる、基準点として用いるなど)と合格率との関連とした。

単変量解析の結果、全ての教育的・社会人口統計学的変数は、合格のオッズ比と有意に関連していたが、多変量ロジスティック回帰モデルでは、UKCATの用い方によって大学間にバラつきがあった。例えば、専門教育を受けていない志願者は、UKCATを境界例だけで試験を用いる大学では、より高階層の志願者と比較して合格の提示が受けにくい傾向が認められた(オッズ比0.51、95%信頼区間0.45~0.60)。
試験得点としてより重視している場合、男性、低階層出身者の合格率が有意に上昇




こうした違いは、UKCATを基準点に用いる医学部志願者に関してはみられなかった(オッズ比:1.27、0.84~1.91)。特に、社会的に弱いグループにいる志願者が不利益を被るということもみられなかった。

UKCAT得点が試験得点としてより重視されている場合、新入生における男性(1.74、1.25~2.41)、社会経済的に低階層の志願者(3.57、1.03~12.39)の割合が高まったこととの関連が認められた。一方で、新入生に占める州立学校卒の割合に関しては有意な傾向は認められなかった(1.60、0.97~2.62)。

境界例にのみ適用している場合は、比較的低い学業達成(5.19、2.02~13.33)、英語が第二言語である(2.15、1.03~4.48)こととの関連が強かった。