65歳以上の心房細動患者の脳卒中リスクについて男女差を調べた結果、女性が男性に比べて高いことが明らかにされた。カナダ・McGill University Health CenterのMeytal Avgil Tsadok氏らが、心房細動で入院した高齢者7万人超について行った地域住民ベースのコホート試験の結果で、JAMA誌2012年5月9日号で発表した。
女性が男性より高齢、CHADS2スコアも高値
同研究グループは1998~2007年にかけて、カナダのケベック州で、心房細動で入院した65歳以上の男性3万9,398人、女性4万4,115人についてコホート試験を行い、ワルファリンの服用傾向や脳卒中発症リスクの男女差について比較した。
入院時の年齢中央値は、男性が77.2歳に対し、女性は80.2歳と高齢だった。CHADS2スコア平均値も、男性が1.74(SD:1.13)に対し女性は1.99(同:1.10)と高かった(p<0.001)。
共存症やCHADS2スコア補正後の脳卒中発症リスク、女性が男性の1.14倍
退院後30日時点で、ワルファリンを処方されていた割合は、男性が58.2%に対し、女性は60.6%だった。多変量解析の結果、女性は男性に比べ、より多くのワルファリンを処方されていた(オッズ比:1.07、95%信頼区間:1.04~1.11、p<0.001)。男女ともに、ワルファリンのアドヒアランスは高かった。
脳卒中発症率についてみると、補正前では、男性が1.61/100人・年(同:1.54~1.69)に対し、女性のほうが2.02/100人・年(同:1.95~2.10)と高かった(p<0.001)。男女間の差は、主に75歳以上の患者が占める割合によるものだった。
試験開始時の共存症やCHADS2スコアの各項目、ワルファリン治療について補正後も、多変量コックス回帰分析の結果で女性の脳卒中リスクは男性より高かった(補正後ハザード比:1.14、同:1.07~1.22、p<0.001)。
結果を踏まえてTsadok氏は、「臨床家は、高齢の女性心房細動で脳卒中リスクが高いことを意識しなければならず、男女の脳卒中予防が同等となるように新たな治療戦略を適用していかなければならない」と述べている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)