バングラデシュの貧困地域に住む妊婦に対し、妊娠9週目からの複合微量栄養素補給(multiple micronutrient supplementation;MMS)をすることで、妊娠20週目からの栄養素補給に比べ、乳児死亡率や5歳未満死亡率が大幅に減少することが明らかにされた。スウェーデン・ウプサラ大学病院の、Lars Ake Persson氏らが、バングラデシュの貧困地域に住む約4,400人の妊婦を対象に行った試験の結果で、JAMA誌2012年5月16日号で発表した。
妊娠30週目のヘモグロビン値や乳児死亡率を比較
研究グループは、2001年11月11日~2003年10月30日にかけて、バングラデシュの妊婦4,436人について試験を開始し、2009年6月23日まで追跡した。
研究グループは被験者を無作為に6群に分け、(1)鉄30mgと葉酸400μg、(2)鉄60mgと葉酸400μg(通常投与群)、(3)鉄30mgと葉酸400μgを含む微量栄養素15種から成るMMS(早期投与MMS群)の3種類のサプリメントについて、妊娠9週目(早期投与群)と妊娠20週目(通常投与群)から、二重盲検でそれぞれ投与を行った。
主要アウトカムは、妊娠30週目のヘモグロビン値、出生体重、乳児死亡率だった。また5歳までの死亡率についても調査した。
早期投与MMS群、通常投与群に比べ乳児死亡率は0.38倍、5歳未満死亡率は0.34倍
結果、妊娠30週目の補正後ヘモグロビン平均値は約115.0g/Lと、群間で有意差はなかった。妊産婦ヘモグロビン平均値は、通常投与群が115.4g/Lに対し早期投与群が114.5 g/Lと、有意に低かった(p=0.04)。
乳児死亡率については、通常投与の鉄60mgと葉酸400μg群44.1/1,000児に対し、早期投与MMS群は16.8/1,000児と、大幅に低率だった(ハザード比:0.38、95%信頼区間:0.18~0.78)。
また5歳未満死亡率についても、通常投与群の鉄60mgと葉酸400μg群が54/1,000児に対し、早期MMS群は18/1,000児と、およそ3分の1だった(ハザード比:0.34、同:0.18~0.65)。
そのほか通常投与MMS群は、自然流産率と乳児死亡率が最も高率だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)