切除可能な腫瘍を有する食道がんまたは食道胃接合部がん患者に対し、術前に化学放射線療法を行った結果、生存率の改善が認められたこと、有害事象発生率は許容範囲であったことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのP. van Hagen氏らによる第3相多施設共同無作為化試験の結果、報告された。数十年間討議されてきた術前化学放射線療法は、これまでは試験結果が不良であったこともあり否定的であったが、同グループによる第2相試験では、毒性作用が低く、切除を受けた患者全員がR0(1ミリ以内の腫瘍なし)を達成していた。第3相試験では、術前に化学放射線療法を施行する群と手術単独群とを比較検討した。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。
366例を術前化学放射線療法施行群と手術単独群に無作為化
研究グループは、切除可能な腫瘍を有する患者を、術前にカルボプラチン(曲線下面積2mg /mL/分となるよう用量を調整)とパクリタキセル(50mg/m2体表面積)の週1回5週間投与と放射線療法(23分画で41.4Gyを週5日)を受ける群または手術のみ受ける群に無作為に割り付け追跡した。
2004年3月~2008年12月に368例の患者を登録し2010年12月までの追跡データが収集できた366例が解析対象となった。被験者の平均年齢は60歳、275例(75%)が腺がんを、84例(23%)が扁平上皮がんを、7例(2%)は未分化大細胞がんを有していた。
化学放射線療法群の全生存期間中央値は手術単独群の2倍
366例は、術前化学放射線療法群178例、手術単独群は188例に無作為化された。
術前化学放射線療法群で最も頻度の高かった重大な血液毒性は、白血球減少症(6%)と好中球減少症(2%)だった。最も頻度の高かった重大な非血液毒性は、摂食障害(5%)と疲労(3%)だった。
術後R0を達成したのは、術前化学放射線療法群92%に対し、手術単独群では69%だった(P<0.001)。病理学的完全奏効は、術前化学放射線療法群では47/161例(29%)で達成された。術後合併症は両群で同程度で、院内死亡率は両群とも4%だった。
全生存期間中央値は、術前化学放射線療法群49.4ヵ月に対し、手術単独群は24.0ヵ月だった。全生存率は、術前化学放射線療法群が有意に優れていた(ハザード比:0.657、95%信頼区間:0.495~0.871、P=0.003)。
(朝田哲明:医療ライター)