アスピリン服用と大出血リスクとの関連について、人口ベースの大規模コホート研究の結果、アスピリン服用が胃腸や脳の大出血リスクと有意に関連することが示された。また、糖尿病患者と非糖尿病患者とで比較した結果、糖尿病の人は出血リスクが増大することが示されたが、アスピリン服用との独立した関連は認められなかったことが報告された。イタリア・Consorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らが、410万人のコホートについて行った試験で、JAMA誌2012年6月6日号で発表した。心血管イベント一次予防としての低用量アスピリン服用のベネフィットは、糖尿病有無による格差は比較的小さい。その差は出血リスクによって相殺されてしまう可能性があることから研究グループは、アスピリン服用と大出血リスクとの関連を糖尿病有無別で検討した。
大出血イベント発生リスク、アスピリン服用群は非服用群の1.55倍
研究グループは、イタリアPuglia州に住む410万人について、人口ベースのコホート研究を行った。そのうち、2003年1月1日~2008年12月31日に、300mg以下の低用量アスピリンの処方を新たに受けた18万6,425人と、同期間にアスピリンの処方を受けなかった同数のコントロール群をマッチングし追跡した。
主要アウトカムは、アスピリン処方後の胃腸大出血または脳大出血による入院だった。
被験者の平均年齢は69.37歳、男性は46.93%だった。
追跡期間の中央値は、5.7年だった。その間、胃腸大出血または脳大出血による入院発生率は、アスピリン服用群で5.58(95%信頼区間:5.39~5.77)/1000人・年、非服用群で3.60(同:3.48~3.72)/1000人・年だった(罹患率比:1.55、同:1.48~1.63)。
糖尿病と大出血リスクは独立して関連、しかしアスピリン服用との関連は認められず
サブグループ(性、年齢、糖尿病、高血圧、心血管系の入院既往などの有無別)での比較では大半が、アスピリン服用と重大出血リスクとの有意な増大が認められたが、糖尿病を有する人については認められなかった(糖尿病者の1,000人・年発症率:1.09、95%信頼区間:0.97~1.22)。
一方で、アスピリン服用の有無にかかわらず、糖尿病は、大出血エピソードと独立した関連が認められた(罹患率比:1.36、同:1.28~1.44)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)