早産は、5歳未満児死亡の2番目に大きな原因だが、早産(妊娠37週未満)に関するデータは国連機関も収集しておらず、システマティックな国別推計も年次推移の解析も行われていないという。英国・ロンドン大学のHannah Blencowe氏らは、2010年の世界184の国と地域の早産率と年次推移について推計値を算出し、また推計値を取り巻く誤差の定量的評価も併せて行った。Lancet誌2012年6月9日号掲載報告より。
早産児の60%以上が南アジアとサハラ以南の2地域に
Blencowe氏らは、事前に特定された包含基準に従って、各国の早産登録データ(51ヵ国、563データポイント)やリプロダクティブ・ヘルス調査(8ヵ国、13データポイント)、システマティックな調査と未発表データ(40ヵ国、162データポイント)を特定した。55ヵ国分のデータは、WHOを通じて追加データを提出した。
データの質と量が適切な13ヵ国については、loess回帰法を用いて2010年の早産率を推計した。171ヵ国と2地域については、多平面統計モデルを作成して2010年の早産率を推計した。信頼性の高い年次推移データがあり年間10,000人以上の早産がある65ヵ国について、1990年から2010年までの年次推移を推定した。誤差範囲はすべての国について算出した。
2010年、世界で約1,490万人[誤差範囲(UR):1,230~1,810万人]の新生児が早産だった。全出産に占める世界の平均は11.1%だったが、ヨーロッパ諸国の約5%からアフリカ諸国の18%まで開きがあった。
早産児の60%以上が南アジアとサハラ以南のアフリカで生まれていた。この2地域だけで、世界の出産の52%を占める。
豊かな国でも早産の傾向、20年で低下したのは3ヵ国のみ
一方で、豊かな国でも早産の傾向が認められた。例えば、米国は早産の最も多い10ヵ国の1つである。推定年次推移データのあった65ヵ国中で、1990~2010年にかけて早産率が低下していたのはわずか3ヵ国(クロアチア、エクアドル、エストニア)だけだった。
Blencowe氏は、全妊娠予後登録の改善と早産の定義の標準適用が重要だと述べるとともに、妊娠28週未満の全早産児の割合に関するデータ質指標の追加を推奨することを提案。その上で、自然早産と医療提供者の介入による早産とを区別するために、帝王切開増大との関連傾向を監視することが重要であると述べ、「迅速な基本的介入の拡大が、小児の生存と成長という国連ミレニアム開発4の達成に向けて加速することを可能にするだろう」とまとめている。