米国の大学で医学研究に従事する医師(physician researcher)の給与について、専門性、研究施設の特性、学問的生産性、大学ランク、労働時間、その他の格差の因子で補正後も、男女の格差が存在することが明らかにされた。米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らが行った調査の結果による。一般に同じように働いている男性と女性の医師に同様の給与が支払われているかどうかは不明であった。JAMA誌2012年6月13日号で発表した。
NIHアワードK08、K23授与者1,853人を対象に調査
研究グループは、比較的均一な医師研究者集団に性差による給与格差があるのか、あるとすれば、その格差は専門性や生産性その他の因子で説明できるかどうかについて調査を行った。
調査は、2009~2010年にかけて郵送調査で行い、対象は、2000~2003年に米国国立衛生研究所(NIH)からアワードK08およびK23の研究費を授与された1,853人のうち、住所が特定できた1,729人だった。
郵送調査の回収率は71%。解析対象は、米国内の大学施設で診療へと結びつけており、現在の年俸を報告した800人の医師に限定した。
主要評価項目は自己申告による年俸で、以下の特性を踏まえた線形回帰モデルで解析した。性、年齢、人種、婚姻状況、子どもの有無、付加的な学位等級、大学での職位、指導的地位、専門性、研究施設のタイプ、地域、NIHの資金提供順位、Kアワード授与以降の施設経験、授与されたKアワードタイプ、Kアワードによる資金提供研究施設、Kアワード授与後の年数、資金提供額、出版実績、労働時間、研究に費やす時間。
同じ能力なら女性医師の給与はいまより1万2,000ドル超高いはず
調査集団における平均給与は、女性医師が16万7,669ドル(95%信頼区間:15万8,417~17万6,922)、男性医師が20万433ドル(同:19万4,249~20万6,617)だった。
専門性、大学での職位、指導的地位、出版実績、研究時間で補正後の最終モデルでも、男性のほうが高給だった(+1万3,399ドル、P=0.001)。
Peters-Belson解析(男性の回帰モデルから導き出された係数を女性にあてはめた)の結果、女性医師の平均給与は、もし女性医師が正確に計った特性を備えている男性だとすると、観察された給与より1万2,194ドル高くなるはずであることが示された。
(朝田哲明:医療ジャーナリスト)