前糖尿病、一過性でも血糖値が正常化すれば糖尿病リスクが低減

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/06/28

 



前糖尿病は糖尿病の高リスク状態であり、たとえ一過性にでも血糖値が正常値に回復すれば、前治療とは無関係に将来の糖尿病リスクが有意に低下することが、米国コロラド大学のLeigh Perreault氏らが進めるDPPOS試験で示された。疾病対策予防センター(CDC)の試算によれば、米国ではおよそ7,900万人が空腹時高血糖または耐糖能異常もしくはその両方の病態を呈する前糖尿病だという。糖尿病やその合併症の予防には、前糖尿病の解消および正常血糖値への回復が重要とされる。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版2012年6月9日号)掲載の報告。

前糖尿病持続例と血糖値正常化達成例のリスクを評価




DPPOS(Diabetes Prevention Program Outcomes Study)試験は、糖尿病高リスク例に対する予防治療の無作為化試験であるDPP(Diabetes Prevention Program)試験の参加者を対象とした観察試験である。

DPP試験の介入期間中央値は3.2年で、2001年7月31日に終了した。13ヵ月の移行期間の後、DPPOS試験が開始された。DPP試験の参加者3,234例のうち2,761例(85%)がDPPOS試験に登録された。DPPOS試験の観察期間中央値は5.7年であった。

DPPOS試験の参加者のうち、前糖尿病状態が持続した例および血糖値の正常化を達成した例[1,990例(72%)、DPP試験での治療割り付け:生活習慣強化介入群736例、メトホルミン群647例、プラセボ群607例]について、糖尿病の発生状況を評価した。
治療法によらず、1回以上血糖値が正常化した患者で56%リスク低下




DPPOS試験中の糖尿病リスクは、前糖尿病状態が持続した患者に比べ、血糖値が1回以上正常化した患者で56%低下し(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.37~0.55、p<0.0001)、DPP試験で割り付けられた治療の影響は認めなかった(血糖値正常化と生活習慣強化介入の交互作用検定:p=0.1722、血糖値正常化とメトホルミン治療の交互作用検定:p=0.3304)。

DPPOS試験における血糖値正常化の達成は、糖尿病リスクの増大に関与する因子の多く(すべてではないが)と逆相関を示した。DPP試験で血糖値が正常化しなかった患者のうち、生活習慣強化介入群は、DPPOS試験における糖尿病リスクが高く(HR:1.31、95%CI:1.03~1.68、p=0.0304)、血糖値正常化の可能性が低かった(オッズ比[OR]:0.59、95%CI:0.42~0.82、p=0.0014)。

著者は、「前糖尿病は糖尿病の高リスク状態であり、特に生活習慣強化介入を行っても前糖尿病状態が解消しない場合はリスクが高い。一過性にでも血糖値が正常値に回復した場合は、前治療とは無関係に将来の糖尿病リスクが有意に低下する」と結論している。

(菅野守:医学ライター)