研究論文は多数の医学ジャーナルに分散、最新知識を得るための支援システムが必要

提供元:ケアネット

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公開日:2012/06/29

 



各専門分野の無作為化試験の論文は多数の医学ジャーナルに広範に分散して掲載され、個々の医師が個人購読で最新の知識を得るには限界があることが、オーストラリアBond大学のTammy Hoffmann氏らの調査で示された。研究論文やそれを掲載する医学ジャーナルの数は急激に増えており、医師が常に最新の研究論文を熟読することは困難で、多くは選定された論文や電子ジャーナルにざっと目を通すだけだという。このようなやり方が効果的とは考えられないが、各専門分野の研究論文がどの程度ジャーナル間に分散しているかは明らかでない。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。

無作為化試験、系統的レビューの論文分散状況を横断的研究で評価




研究グループは、無作為化試験または系統的レビュー論文の分散の程度および専門分野の分散の仕方の特徴を評価するために横断的研究を行った。

PubMedを検索して、2009年に発表された疾病負担が最も大きい9つの疾患や障害、およびそれぞれが属する疾患カテゴリーに関する無作為化試験または系統的レビューの論文を抽出した。
個人購読では限界




医学ジャーナルに掲載された論文の分散は専門分野によってばらつきがみられ、最も分散度が低い耳鼻咽喉学(363論文が167誌に掲載)から、最も分散度が高い神経学(2,770論文が896誌に掲載)までの幅があった。

論文の50%を掲載するのに要するジャーナルが10誌以下の専門分野は、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、難聴の3分野だけだった。論文の分散度は系統的レビューのほうが低かったが、最も低い難聴(10論文が9誌に掲載)から最も高いがん(670論文が279誌に掲載)までの幅がみられた。

著者は、「無作為化試験の論文の出版率は1日に1~7論文と大きな幅がみられ、数百もの一般誌や専門誌に分散して掲載されていた。系統的レビューは分散度が低いものの、それでも広く分散していた」とまとめ、「医師が最新の知識を得るには、医学ジャーナルの個人購読では限界があり、十分な数のジャーナルを網羅したり、質の高い論文や関連論文を抽出するシステムなどによる支援が必要で、現時点では適切なシステムはない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)