腎不全の未治療率は、年齢が高齢になるほど、より若い人に比べて高いことが、カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏らによる当地の住民約182万人について行った一般住民対象コホート試験の結果、明らかにされた。eGFR値が15~29mL/min/1.73m2のグループでは、腎不全未治療率は85歳以上が18~44歳の5倍以上だったという。Hemmelgarn氏らは、高齢者の腎不全研究は透析開始に焦点が集まっており、未治療高齢者の疾患負荷について軽視されているのではないかとして、年齢と腎不全治療との関連について検討した。JAMA誌2012年6月20日号掲載より。
被験者を年齢とeGFR値でグループ化、腎不全治療率を比較
研究グループは2002年5月1日~2008年3月31日にわたってカナダのアルバータ州で、試験開始時の糸球体濾過値(eGFR)が15mL/min/1.73m2以上で、腎置換療法を必要としなかった181万6,824人を対象とするコホート試験を行った。年齢別に、透析や腎移植を受けた人の割合や、治療を受けなかった人の割合、死亡率を調べ比較した。被験者の年齢については、18~44歳、45~54歳、55~64歳、65~74歳、75~84歳、85歳以上に分類した。eGFR値については、90以上、60~89、45~59、30~44、15~29mL/min/1.73m2に分類した。
被験者の平均年齢は48.2歳(標準偏差:17.2)、うち男性が44.3%だった。被験者の45.1%が、年齢が18~44歳だった。
eGFR値15~29mL/min/1.73m2グループ、85歳以上の腎不全未治療率は18~44歳の5倍以上
追跡期間中央値は4.4年だった。その間、死亡は9万7,451人(5.36%)で、腎不全を発症し、治療を受けたのは3,295人(0.18%)、治療を受けなかったのは3,116人(0.17%)だった。
いずれのeGFR値グループでも、腎不全の治療を受けた人の割合は、年齢が若い年齢群が、より高齢の群に比べて高率だった。たとえば最小eGFR値グループ(15~29mL/min/1.73m2)では、腎不全の治療率は1,000人・年当たり、18~44歳が24.0(95%信頼区間:14.78~38.97)だったのに対し、85歳以上では1.53(同:0.59~3.99)と、10倍以上の格差があった(p<0.001)。
一方、腎不全の治療を受けていない人の割合は、高齢の群のほうが、より若い年齢群に比べ高率だった。最小eGFR値グループ(15~29mL/min/1.73m2)では、腎不全の未治療率は1,000人・年当たり、85歳以上が19.95(95%信頼区間:15.79~25.19)だったのに対し、18~44歳では3.53(同:1.56~8.01)と、5倍以上の格差があった(p<0.001)。
なお、治療・未治療を含む全腎不全患者の年齢階層群別の割合については、大きな変差はなかった。たとえば、最小eGFR値グループ(15~29mL/min/1.73m2)の補正後腎不全患者の割合は1,000人・年当たり、18~44歳では36.45(95%信頼区間:24.46~54.32)、85歳以上では20.19(同:15.27~26.69)だった(p=0.01)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)