軟性S状結腸鏡を用いたスクリーニングの効果について、その実施は大腸がんの発生率(遠位・近位大腸がんとも)および死亡率(遠位大腸がんのみ)を有意に低下することが示された。米国・ピッツバーグ大学のRobert E. Schoen氏らが米国内多施設共同による無作為化試験で約15万5,000例のスクリーニング受診者を追跡し報告した。大腸がん検診のための内視鏡スクリーニングの利点は定まっていない。これまで軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットを検討する無作為化試験は欧州(英国、イタリア、ノルウェー)で3試験が行われているが、結果は相反する報告が寄せられている。NEJM誌2012年6月21日号(オンライン版2012年5月21日号)掲載報告より。
軟性S状結腸鏡群と通常ケア群に無作為化、3年または5年で再スクリーニング
欧州3試験の結果では、英国の試験では発生率が有意に23%低下し死亡率31%低下をもたらしたことが報告され、イタリアの試験では発生率が18%低下、死亡率は有意ではないもの22%低下したことが報告、ノルウェー試験では追跡7年時点ではスクリーニングの効果が認められなかったことが報告されている。
これらを踏まえて研究グループは、1993年から2001年にかけて、55~74歳の男女15万4,900例を無作為に、軟性S状結腸検査をベースラインと、3年後または5年後に再度行うスクリーニング群(介入群、7万7,445例)と、通常ケアを行う群(7万7,445例)に割り付け、大腸がんの症例および同疾患による死亡例について分析した。
介入群7万7,445例のうち、基線で軟性S状結腸鏡検査を受けたのは83.5%、3年または5年経過時点で再度スクリーニングを受けたのは54.0%だった。
大腸がんの発生率と死亡率で有意な低下を報告
追跡期間は中央値11.9年だった。その間の大腸がん発生率は、介入群の1万人・年につき11.9例(1,012例)に対し、通常ケア群は同15.2例(1,287例)で、介入群が21%の低下を示した(相対リスク:0.79、95%信頼区間:0.72~0.85、P<0.001)。
有意な低下は、遠位大腸がん(介入群479例対通常ケア群669例、相対リスク:0.71、95%信頼区間:0.64~0.80、P<0.001)と近位大腸がん(512例対595例、0.86、0.76~0.97、P=0.01)の両方で認められた。
大腸がんによる死亡は、通常ケア群の1万人・年につき3.9(341例)に対して、介入群は同2.9(252例)で、介入群が26%の低下を示した(相対リスク:0.74、95%信頼区間:0.63~0.87、P<0.001)。
遠位大腸がんの死亡率は50%低下した(介入群87例対通常ケア群175例、相対リスク:0.50、95%信頼区間:0.38~0.64、P<0.001)。
一方で、近位大腸がんの死亡率には影響がみられなかった(143例対147例、0.97、0.77~1.22、P=0.81)。
(朝田哲明:医療ライター)