膣脱修復術後の失禁予防のための中部尿道スリング術

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/07/04

 



骨盤臓器脱の経膣的手術後に、尿失禁リスクに対して予防的に行う中部尿道スリング術のベネフィットとリスクについて検証した多施設共同無作為化試験の結果、3ヵ月と12ヵ月時点の尿失禁は低率となる一方、有害事象が高率でみられることが、米国・ミシガン大学のJohn T. Wei氏らにより明らかにされた。文献的には膣脱修復術を受ける女性は5人に1人に上り、欧州女性に関する報告では手術を受けた女性の4人に1人に尿失禁が出現することが示されている。これらに対して近年施術されるようになったのがスリング術だが、この予防的処置の相対的なベネフィットとリスクについては、これまで明らかにされていなかったという。NEJM誌2012年6月21日号より。

スリング術群と偽切開群に無作為化し追跡




研究グループは、膣脱手術を受ける予定の女性(骨盤臓器脱定量化システム検査でステージ2以上)で、腹圧性尿失禁症状のない女性を、術中に中部尿道スリング術または偽切開を受けるよう無作為に割り付け、術後の尿失禁治療の有無について調べた。また、術前に腹圧性尿失禁テストを行うことについても評価した。

主要エンドポイントは2つを定め、第1主要エンドポイントは、3ヵ月時点での尿失禁の出現、または尿失禁治療を受けている割合とした。第2の主要エンドポイントは、12ヵ月時点におけるその後に尿失禁治療が見込まれる割合とした。

スリング術群の尿失禁の出現は低率だが有害事象が高率で出現




337例の女性が無作為化され、327例(97%)が1年間の追跡調査を完了した。

結果、3ヵ月時点の尿失禁(または治療)の発生率は、スリング術群23.6%に対し、偽切開グループ49.4%だった(P<0.001)。

12ヵ月時点での尿失禁(またはその後に治療が見込まれる)の発生率は、スリング術群27.3%、偽切開群43.0%だった(P=0.002)。12ヵ月時点で尿失禁1例を予防するのに必要なスリング術は6.3例だった。

一方で、膀胱穿孔の発生率が、スリング術群のほうが偽切開群より高かった(6.7%対0%)。同様に、尿路感染症(31.0%対18.3%)、重大な出血性合併症(3.1%対0%)、術後6週間にわたる残尿感(3.7%対0%)も、スリング術群で高率に認められた(全比較におけるP≦0.05)。

(朝田哲明:医療ライター)