ウガンダ北部内戦で強制移住させられた人々には、先行研究によって重大な精神衛生上あるいは心理社会的な問題があることが明らかになっている。ジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院のPaul Bolton氏らは、ウガンダ北部で戦争と強制移住を生き延びた青少年の間に広がる抑うつ症、不安症、問題行動への介入効果を評価するため、無作為化対照試験を行った。報告はJAMA誌8月1日号に掲載された。
集団対人関係療法群、activity-based介入群、待機群で比較
対象は、強制移住させられた人々が住むウガンダ北部の2つのキャンプの14~17歳の青少年。地域性を考慮して開発されたスクリーニング・ツールによって、抑うつ症状と不安症状、問題行動などが評価され、研究の判定基準を満たした314人を、精神療法介入群105例(集団対人関係療法)、activity-based介入群105例(音楽や美術などクリエイティブ活動)、待機対照群104例(研究終了時に治療を受ける待機者リスト)にランダムに割り付けた。
介入グループは16週間にわたって毎週、1時間半から2時間のミーティングが継続され、介入群と対照群は研究終了時点で再評価された。試験は2005年5月~12月にかけて行われた。主要評価項目は抑うつ症の改善、副次評価項目は不安症、問題行動、機能スコアの改善。抑うつ症、不安症、問題行動は下限値32を最小スコアとするAcholi Psychosocial Assessment Instrument(最大スコアは105)を用いて評価された。
集団対人関係療法で少女のうつ改善、少年には別の介入が必要
集団対人関係療法群の抑うつ症改善を示す補正平均スコアは、対照群との間で9.79ポイントの差があった。特に女子についての両群の差は12.61ポイントで実質的に有意な改善と呼べる効果を示していたが、男子は5.72ポイントで統計学的に有意と言える改善は認められなかった。
また抑うつ症改善は、クリエイティブ活動群では認められなかった(-2.51ポイント)。
不安症、問題行動および機能スコアについては、いずれの介入群でも統計学的に有意な改善は見られなかった。
Bolton氏らは、「かろうじて少女の抑うつ症状に対して集団対人関係療法の効果があることはわかったが、少年に対しては他の有効な介入方法を開発しなければならない」と結論づけている。
(朝田哲明:医療ライター)