米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのKeith T. Flaherty氏らによる第3相無作為化オープンラベル試験の結果、新規の経口選択的MEK阻害薬トラメチニブ(本邦未承認)は従来の化学療法と比べて、BRAF変異のある進行期メラノーマ患者の無増悪生存期間と全生存期間を改善することが報告された。進行期メラノーマ患者ではBRAF変異が50%でみられ、同集団への選択的BRAF阻害薬による治療は、化学療法と比較し生存を改善するが、たいていは短期間であった。一方でMEK阻害薬については、BRAF変異のある患者を対象とした第1相、第2相試験で、腫瘍退縮と病勢安定のエビデンスが示され新規の治療薬として有望視されているという。NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月4日号)掲載報告より。
トラメチニブ群vs.従来化学療法群
試験は、BRAF V600E変異またはBRAF V600K変異を有する進行期メラノーマ患者322例を、トラメチニブ(※国内未承認、2mg経口投与、1日1回)群、または化学療法群[ダカルバジン1,000mg/m2(体表面積)、またはパクリタキセル175mg/m2(体表面積)を3週ごとに静脈内投与]のいずれかに2対1の比率で無作為に割り付け検討した。化学療法群の患者は、病勢が進行した場合はトラメチニブの投与を受けるクロスオーバーが認められた。
主要エンドポイントは無増悪生存期間とし、副次エンドポイントは全生存期間とした。
無増悪生存期間中央値、トラメチニブ群4.8ヵ月、化学療法群1.5ヵ月
結果、無増悪生存期間中央値は、トラメチニブ群4.8ヵ月、化学療法群1.5ヵ月で、トラメチニブ群の有意な延長が認められた(トラメチニブ群の病勢進行または死亡のハザード比:0.45、95%信頼区間:0.33~0.63、P<0.001)。
6ヵ月時点の全生存率は、トラメチニブ群81%だった一方、化学療法群はクロスオーバーを含めても67%だった(死亡のハザード比:0.54、95%信頼区間:0.32~0.92、P=0.01)。
トラメチニブ群における最も頻度が高い毒性作用は発疹、下痢、末梢浮腫で、これらは投与中断または投与減量で管理することができた。また、無症候性かつ可逆性の心駆出率低下と眼毒性が頻度は低いが認められた。続発性の皮膚悪性新生物は認められなかった。
(朝田哲明:医療ライター)