開発途上国ではいまだに望まない妊娠が多く、避妊薬は妊産婦死亡率の低減のための有効な予防戦略であることが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のSaifuddin Ahmed氏らの調査で示された。避妊薬の使用により毎年ほぼ2億3,000万の出生が回避され、望まない妊娠の主要な予防戦略は家族計画であり、世界的な出生率(1人の女性の平均出産回数)の低下(1970年代初頭の4.7が2000年代末期には2.6へ)は主に避妊薬使用の増加によるという。妊産婦死の99%が開発途上国で発生しており、家族計画は開発途上国における妊産婦死の抑制に取り組む「安全な母性イニシアチブ(Safe Motherhood Initiative; SMI)」の4大目標の1つとされる。Lancet誌2012年7月14日号(オンライン版2012年7月10日号)掲載の報告。
避妊薬による妊産婦死亡率の抑制効果を評価
研究グループは、妊産婦死亡率に及ぼす避妊薬の効果を評価し、避妊薬の供給不足が満たされた場合に、国、地域、世界レベルでどの程度の死亡率の低減が見込めるかを検討した。
3つのデータベース[世界保健機構(WHO)のMaternal Mortality Estimation Inter-Agency Group(MMEIG)データベース、国連(UN)の2010年World Contraceptive Useと2010年World Population Prospectsデータベース]から関連データを抽出した。反事実モデルを用いたアプローチ(モデルI)を適応し、MMEIG(WHO)の妊産婦死亡率予測法による解析を行い、172ヵ国における避妊薬の使用による妊産婦死の低減効果を推算した。
別のモデル(モデルII)を用いて167ヵ国で同様の解析を行い、満たされていない避妊薬需要が満たされた場合の死亡率を予測した。避妊薬の満たされていない需要(unmet need)は、妊娠を回避あるいは間隔をあけたいと望むが避妊薬を使用していない妊娠可能女性(15~49歳)の割合と定義した。
妊産婦死亡率が44%低減、使用しないと1.8倍に
モデルIによる解析では、2008年に34万2,203人の妊産婦が死亡したが、避妊薬の使用により27万2,040人の妊産婦死が回避された(44%低減)。避妊薬を使用しない場合は、2008年の妊産婦死は1.8倍になると推定された。満たされていない避妊薬需要が満たされると、年間10万4,000人の死亡が回避されると予測された(29%低減)。
著者は、「開発途上国では望まない妊娠がいまだに多く、避妊薬の需要が高い。避妊薬が、開発途上国における妊産婦死亡率を低減するための有効な予防戦略であることを示すエビデンスが得られた」と結論づけている。
(菅野守:医学ライター)